ゴンドラ 静寂
ヴェネツィアの魅力の一つに「静寂」がある。サンマルコ広場などの観光スポットは、静寂とはかけ離れた「喧騒」状態のことが多いが、ちょっと観光ルートを外れると心地よい静寂に出会える。あのサンマルコ広場だって、冬場の夜中や早朝には中世に戻ったかのような静けさを感じることが出来る。その大きな原因は、この街が車のない空間だからなのだろう。
ある年、運河沿いのホテルに宿泊した時は、朝教会の鐘の音とともに目覚めた。その鐘が鳴り終わって余韻も消える頃、こんどはひそやかなヒタヒタという音が部屋に忍び込んできた。何だろう。ベッドから窓をのぞくと、部屋のすぐ脇をゴンドラが通り過ぎてゆくところだった。「ああ、私は今、確かにヴェネツィアにいる」。そう実感する幸せな瞬間を、櫂の音が運び込んでくれた。
リアルト橋からはいつでもゴンドラの姿を見ることが出来る。でもこの場所で見るゴンドラが最も美しいのは、西に夕陽が沈もうとする頃合いだと思う。水面が色づき、ゴンドリエーレがシルエットとなって浮かび上がると、そこはもうフェニーチェの舞台のように華やかなドラマの幕開けだ。
ゲーテはゴンドラに乗って「アドリア海の支配者のように感じた」とイタリア紀行に記しているが、真の支配者は乗客ではなくてゴンドリエーレではないか、と私は思っている。
この場所はサンマルコ広場の近く、サン・モイゼ教会の横側。ブランドショップの並ぶ3月22日通りから一つ脇に入ったホテル・サン・モイゼ前の運河は、ゴンドラを眺めるのに絶好のスポットだ。
これほどラッシュのような沢山のゴンドラが通り過ぎても、決してうるさくなったりはしない。乗客の歓声さえ起きなければ。ただ、よくあるのはツアー会社が企画する団体客への歌のサービス。これだけは願い下げだ。
夜、停船所に集合したゴンドラたち。まだそれほど遅くない時間だったが、もうゴンドラは眠りに入ろうとしている。それもそのはず、この日は12月25日。ゴンドリエーレたちはみな家族の許へ帰ってしまった。
運河の揺れがゴンドラに伝わり、ゴンドラの舳先は常に揺れ続ける。水の上で歴史を刻むことを選んでしまった者の宿命であるかのように・・・
| 固定リンク
« 座る人たち | トップページ | ゴンドラ ラッシュ »
「VENEZIAの風景」カテゴリの記事
- 「インフェルノ」下 ラングドン教授の行きついた場所は?ーヴェネツィア、イスタンブール編(2014.04.15)
- ヴェネツィアの意外・不思議な風景(2014.04.01)
- ヴェネツィア・夜のショウウインドー(2014.03.25)
- サルーテ教会に沈む夕陽(2014.03.21)
- 夜明け前の海岸散歩ーサンマルコ、スキアヴォーニ(2014.03.04)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント
こんにちは♪
ヴェネツィアといえば、ゴンドラというくらい、欠かせないもののような気がします!
他にはない美しい形とか、個性ある装飾とか、たぶん力がすごくいるんだろうけど優雅に見えるこぎっぷりとか…。
何もかもがステキです♪
でも、ヴェネツィアに行った時に乗ったゴンドラは、ツアーの人達とひとまとめにされたので、歌う人とアコーディオン付きでした…。
投稿: がーこ | 2010年3月17日 (水) 13時15分
がーこ様
私も最近はずっとゴンドラには乗っていません。もっぱら鑑賞専門ですね。市場付近などにある運河横断のトラゲットには時たま乗る事がありますが。
投稿: gloriosa | 2010年3月18日 (木) 23時02分
初めまして!
鵠(まと)と、もうします。
突然ですが、がーこ様が撮影されたゴンドラの素敵な写真をサイトの背景に使用したいのですが、よろしいでしょうか?
投稿: 鵠 | 2011年3月19日 (土) 20時54分
鵠様
初めまして。メール拝見しました。ゴンドラの写真ということですが、この欄には7枚の写真があります。どれをご希望ですか?また、どのような形でお使いになるのか、少し詳し目にお教えください。
なお、撮影者はがーこ様ではなくて、このブログを運営しているGloriosaと申します。
投稿: gloriosa | 2011年3月19日 (土) 22時03分
大変失礼致しました。
Gloriosa様
申し訳御座いません…
1頁目の2枚目の写真です。
トップ画と、加工してサイトのバナーとして使いたいと考えています。
投稿: 鵠 | 2011年3月20日 (日) 11時24分
鵠様
了解しました。営利目的等の意図はないでしょうし、どうぞお使いください。ただ、どこか片隅で結構ですが ブログ「イタリアの誘惑」より といった形で出典を明示していただければ有り難いのですが。よろしくお願い致します。
投稿: gloriosa | 2011年3月20日 (日) 21時06分