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ランス大聖堂  切られた自分の首を抱えて歩き続けた聖人

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 ランスのホテルは大聖堂から歩いて数分のところにあった。エレベーターのない4階(日本式で5階)の部屋ということで、荷物を持って上がるのに大汗をかくことになった。だが、一つだけ思いがけないメリットがあった。

 朝早く外の空気を入れようと窓を開けると、通りの奥に何やら巨大な影が見えた。確認すると、それはまさしく大聖堂だった。

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手前に別の部屋があったのでその全容を見ることはできないが、ちょうど朝日の上る少し前、空が赤みを増そうという時刻のシルエットを、ほぼ正面から見ることが出来た。

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 朝食後、まずは大聖堂の東に足を伸ばした。大聖堂の裏側、つまりフライングバットレスの露出した豪快な姿を、直射日光の下で見たかったからだ。西正面側の優美なフォルムとは打って変わって、ゴシックの建築は東に全く別の顔を持つところがとても面白い。

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 戻りがけに北側扉口を見た。ここにも3つの扉口があるが、中央扉口にはとんがり帽子をかぶった聖カリクストゥスがおり、その上に広がるタンパンのおびただしい像がすごい。

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 その左側壁面には、自分の首を持って立つという不思議な像がある。

 この人はパリ最初の司教サン・ドニ。3世紀半ばに、今のフランス・パリ地方にキリスト教布教のために訪れた伝道者だ。当時キリスト教はまだ迫害の対象となっており、伝道の最中拷問に遭い、斬首刑となってしまった。しかし彼はただの伝道師ではなかった。殺された後、自分の首を取り上げ、約10キロ離れた地(現在のサンドニ)まで歩き、そこで息絶えたのだという。その奇跡によって、後にフランスの守護聖人になった。フランスの教会を訪ねるとあちこちで首を持った聖人像に出会う。大半はこのサン・ドニさんだと思って間違いない。

 オーギュスト・ロダンはこの像について「北の入り口の素晴らしいサン・ドニ。飛躍の途中で断ち切られ、中断されても、その思想はずっと後になってもはや終わることのない日に再び結びあわされて力を取り戻すという象徴だ」と記している。

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 左扉口には、美しき神・キリスト像。

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 その上には「最後の審判」の模様が事細かに彫られている。大変に細かい仕事がなされているのがわかる。

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 ここの扉口が開いていたので、そこから聖堂内に入った。中央扉口上にある薔薇窓の青さがなかなか見事に見える。

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 その底辺部分にある像も一つ一つ丁寧に製作されているのがわかる。

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 ちょうど扉周辺の群像の一部に朝日が差し込んでいた。

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 でもやはり、この大聖堂は西正面からの姿が一番美しい。

 

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コメント

早朝のホテルの部屋からの眺め、
最高のロケーションでしたね。
今回も、写真の細部ひとつひとつに目を凝らしながら、
興味深いお話を楽しみながら、
記事を堪能させていただきました。
グロリオーサさんの素敵なブログは、
本当に一冊の本になってほしいくらいです。

投稿: hanano | 2011年10月22日 (土) 15時08分

hanano様

 いつも温かいお言葉、本当に有難うございます。落ち込んでブログ更新の気力がわかない時でも、この言葉を励みにして頑張れるような気がしています。
 もう少しランスが続きますが、シャガールやレオナール・フジタについても触れたいと思っています。

投稿: gloriosa | 2011年10月23日 (日) 21時23分

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