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ウフィツィ美術館 究極の至宝 ヴィーナスの誕生、春(プリマヴェーラ)

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 昨年暮れ、東京のイタリア文化会館でウフィツィ美術館所蔵の代表的絵画10点を精密に複写した作品展示が行われた。フィレンツェの美術館は写真撮影禁止だが、この催しは撮影OKということで、カメラに収めた。複写といってもかなりの精密さだったので、作品の感触はお伝えできるだろうということで、その写真を使ってウフィツィ美術館の話を進めよう。

最初はボッティチェッリの「春」(プリマヴェーラ)から。

 

 三美神(グラツィア)が楽しげに集い

 美神(ベルタ)は髪を花冠で飾る

 好色な西風(ゼフィロス)は花の女神(フローラ)の後を追い

 緑なす草は花咲き乱れる

 陽気な春の女神(プリマヴェーラ)も欠けてはいない

 彼女は金髪と縮れ毛をそよ風になびかせ

 無数の花々で小さな花冠を結ぶ

 

この詩は、アンジェロ・ポリツィアーノという詩人の作品だ。一読して、思い浮かべる光景は、少しでもルネサンス絵画に関心のある人なら、まさにボッティチェッリの「春」に描かれた場面とそっくりなのに気付くだろう。

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 右から美、中央の後ろ向きが貞節、左が愛。三美神とはこの3人だ。愛と貞節は目をそむけているが、この2人を美が取り持つといわれる。薄絹をはおった三美神が華やかな舞いを繰り広げる。

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 画面の右側では、西風が森の妖精クロリスに求愛し、クロリスはそれを受けてフローラに変身しようとしている。

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 ヴィーナスは、少し奥まった場所に立っているが、その存在感は十分だ。

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 そして、彼女らの足元には無数の花々が咲き乱れている。

 

 白、空色、淡黄、紅色、

 草原は花々の美しさで驚くばかり

 ポリツィアーノは、トスカーナ・モンテプルチャーノ出身で、フィレンツェのメディチ家の当主ロレンツォに詩作を教えた。ボッティチェッリもまたロレンツォに可愛がられた画家で、2人とも親交があったとされる。そんな2人の文学と絵画のあふれる才能が融合した時、素晴らしい作品が生まれても不思議はない、と思われる。謎の多い作品といわれるが、率直にその美しさに感動するのもいい。

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 ボッティチェッリのもう一つの代表作品「ヴィーナスの誕生」。ストーリーは左から右に進んで行く。西風ゼフィロスはフローラを抱えたまま、生まれたばかりのヴィーナスに風を送っている。右にいる時の神ホーラーはその風にはためく大きな布を広げて、ヴィーナスを抱きとめようとしている。

 「春」が暗い背景に描かれているのに対して、こちらはすっきりと明るい海上に主役がいる。ヴィーナスはまるで貝の上に浮かんでいるかのように軽やかだ。

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 ゼフィロスも浮遊感たっぷり。飛び散るバラはヴィーナスの象徴だ。

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 ホーラーの衣服の柔らかさが、清涼感を一層高めている。

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 そして、何といってもヴィーナスの透けるような肌合いの見事さ。少し憂いを帯びた表情、風にたなびく髪の奔放さ。どれをとっても他に比べられないほどの圧倒的な質感で、見る者を引きつけずにはいない。

 そして、個人的にはボッティチェッリの美しさは線の美しさなのだろうと思う。女性の姿をくっきりとトレースした輪郭線がヴィーナスを引き立たせている。それもすべて流麗な曲線。美術館のこの絵の前でじっと見ていたら、次第にヴィーナスが画面から浮き出して来る感覚に襲われた。それは、スフマートの手法を使って全く輪郭線を消してしまったダ・ヴィンチのモナリザとは対極にある美の表現法なのだろう。

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フィレンツェの美術  美術館・博物館」カテゴリの記事

コメント

「プリマヴェーラ」、物語性のある作品ですね。
この絵を見たのは、まだ大学へ入ったばかりの頃、
初めて一人旅でフィレンツェを訪れた際でしたが、
緻密に描写された植物が咲き乱れる森の中の
神話的な世界と優美な女神たちの姿が
美術館の薄暗い空間とも相まって、絵の中に
引き込まれそうで、心を奪われたことをよく覚えています。
ウフィツィのヴィーナスといえば、ティツィアーノの
「ウルビーノのヴィーナス」もとても美しいですね。

投稿: hanano | 2012年1月29日 (日) 13時39分

hanano様

 ボッティチェッリは、私にとっては、一度引き込まれ、一旦離れた後にもう一度見直してみたくなるといった作品です。最初は、付き合っていた女性が彼の作品が好きだったという、非常に不純な動機だったのですが・・・。(笑)
 ウルビーノのヴィーナスも文化会館にありましたので、近くアップしますよ。

投稿: gloriosa | 2012年1月29日 (日) 22時26分

ストップモーションのこの「春」絵は、青いゼフュロスがエロスの彼女をアフロディテの花園にそっと降ろすと役目を終える。見えないエロスに掴まる彼女の無理な手の形。その瞬間にエロスが反転して情熱の炎を持った矢を射ると彼女の足元のアイリスの花に命中する。瞬間に画面のすべての人物が動き始めます。それは全ての人物の足の形を一人ひとり見てください、見れば、動いていることがわかる。このような動き始める絵画は感動ものです。ゼフュロスが青く、クピドが反対を向いている、そのままではいつまで経っても人物はストップモーションを続けなくてはなりません。400年もの間、無理な形をして止まったままで、可哀そうです・・・・・。

投稿: isiyama | 2013年5月19日 (日) 17時14分

isiyama様

 初めまして。コメント有難うございます。プリマヴェーラは見れば見るほどいろんな発見が出来る絵ですよね。近年、絵の前にガラス板が張られてちょっと見にくくなりましたけど・・・。また、よろしくお願いします。

投稿: gloriosa | 2013年5月20日 (月) 21時02分

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