イタリア統一広場のライトアップ トリエステ

　この街の中心地ウニタ・ディタリア広場を見てみよう。日本語に直せばイタリア統一広場となる。でも、この広場の造成はオーストリア支配時代だ。中央奥に市庁舎があり、向かって左側には県庁（州庁舎）、右側にはロイド・トリエスティーノ館などの壮麗な建築群が並ぶ。

　県庁舎の壁面は金色の装飾がなされている。

　夕方になると、西日を浴びて見事にキラキラと光を放つ。

　中央のバルコニーは、第二次世界大戦時にはムッソリーニがここで演説をした場所でもある。

　非常に広いゆったりした空間を持つ広場で、地元の市民に言わせると、ここは「海に面した広場としてはヨーロッパ最大級」とのことだ。

　市庁舎付近には４大陸を表わす彫刻の噴水が置かれている。

　そのてっぺんの人はなぜか飛んでいた。

　この広場の最大の魅力は何と言ってもライトアップの美しさだ。日没になると、建物に光が当てられる。

　市庁舎が浮かび上がってきた。

　広場全体が夜のブルーモメントに包まれ始める。

　ここはライティングの仕方が光を下側から上に向かって当てているせいか、より立体的に見えてくる。

　空の色もとても澄み切っている。

　というのは、この夜も非常に強い風「ボーラ」が吹き出していた。

　従って広場にはほとんど人はおらず、風に飛ばされそうなものはすべてしまわれていた。そのために写真からはあまり現実感はないのだが、大人の人間の体でも飛ばされそうになるほどの状態だった。わずかに、市庁舎屋上のイタリア国旗がすべて振り切れるほどにはためいているのが、お分かりになるだろうか。

　イタリア人と結婚してイタリアに住んだ作家須賀敦子さんは、その著書「ミラノ霧の風景」で、ボーラをこんな風に書いている。

　「トリエステにはボーラという北風が吹く。夫はその風のことをなぜか懐かしそうに話した。瞬間風速何十メートルというよう突風が海から吹きあげてくるので、坂道には手すりが付いていて、風の日には吹き飛ばされないようにそれにつかまって歩くのだという。君なんかひとたまりもない。吹っ飛ばされるよ。と、夫はおかしそうに笑った」。