2つの異色の教会ーアンジェリ教会、クワトロ・フォンターネ教会
今回は、ミケランジェロとボッローミニという2人の芸術家にゆかりの異色の教会を紹介しよう。
前回の共和国広場に面して、不思議な外観の教会がある。サンタ・マリア・デリ・アンジェリ教会。一見すると昔の遺跡か廃墟。だが、これはわざわざこうした形にミケランジェロが設計したものだ。
前回も触れたが、ここは4世紀、ディオクレティアヌス帝が造った大浴場跡。ミケランジェロはピオ4世の依頼でここに教会建築を任されたが、彼は古代遺跡に敬意を払って浴場跡の壁面をそのまま活用したファザードを設計した。天才の発想は実に柔軟だったことが良くわかる。ただ、教会建築は一時中断、その間にミケランジェロは死亡し、完成は18世紀まで持ち越された。
入口には彫刻像が壁に張り付いたように取り付けてある。
不思議な立体感を演出している。
中は広大なスペース。浴場のスケールがそのままここでも生かされている。
入口近くにまるで双子のような2体の聖人像があった。
そう古いものではないようだが、素朴な中にも厳粛な清らかさを感じさせる。
どの角度から見ても素晴らしく神々しい姿。すっかり見とれてしまった。
一方で、全く現代的な「包帯をした顔」も。
アンジェリ教会から300mほどの所に、もう1つ変わった教会がある。サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ教会。ベルニーニがローマバロックの代表者として君臨していた時代、ついにトップに立てずに悲劇的な最後を遂げた建築家がいた。フランチェスコ・ボッローミニ。彼の残した珠玉の建築がこの教会だ。その天井の美しさをご覧あれ。
この教会はとても小さい。面積はベルニーニが傑作を残したサン・ピエトロ大聖堂のクーポラを支える柱と柱の一間分しかないという。だが、張りつめた美しさを今も保ち、ローマっ子たちはここを愛情を込めて「サン・カリーノ」(可愛い)と呼んでいる。「サン・ピエトロの美しさは、その大きさにあるが、サン・カリーノの美しさは、その小ささにある」。
最も特徴的なのが、クーポラ。6角形と8角形、十字を組み合わせた模様や、大きな楕円の中に小さな楕円が混じり、複雑に組み合わさった形が独特の雰囲気を醸し出す。白を基調にすっきりと洗練された美しさが頭上に広がる。
その中心にあるハトは聖霊を表わすと共に天国を象徴している。
祭壇の上部の半円にも独特の模様が施されている。
さまざまな形が中央の天窓に近づくにつれて小さくなり、全体として天に舞いあがる効果を発揮しているようだ。
そんな独創的な建築を生みだしたボッローミニは極めてエキセントリックな性格だった。うつ病を患っていたといわれ、床に剣を立てそこにダイビングして自殺したという衝撃的な最後を遂げている。天才と狂気は紙一重というけれど・・・。
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コメント
どちらも魅力的な教会ですね。
サンタ・マリア・デリ・アンジェリ教会は外観もそうですが、
入り口の清らかな聖人像の姿には、本当に見とれてしまいますね。
サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ教会の
小宇宙のような天井も素晴らしいです。
ぜひ一度、本物の空間に立ってみたいと感じました。
投稿: hanano | 2013年8月25日 (日) 15時25分
hanano様
ローマはやはりヴェネツィアなどに比べれば都市の規模が大きいので、意外に知られていない教会が沢山あります。そんな教会で出会うサプライズがたまらない楽しみです。
体調は回復なさっていますか?そちらのブログも拝見しました。夏の終わりの雨、ちょっとけだるさを感じさせる時間が、昔は大好きでしたが・・・。
投稿: gloriosa | 2013年8月25日 (日) 22時22分