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2014年6月

もう1つの「最後の晩餐」サント・ステファノ教会、マッジョーレ教会ーヴェネツィアにティントレットを訪ねて⑤

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 アカデミア橋の手前にある大きな教会がサント・ステファノ教会だ。15世紀のヴェネツィアンゴシック様式の建築。入って奥右側の別室に、ティントレットが円熟期に描いた3枚の絵に出会える。「最後の晩餐」は、マッジョーレ教会のものより保存状態がよく、色彩も鮮やかに残されている。

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 入口の壁に掲げられている大きな2枚の絵は「弟子の足を洗うキリスト」「ゲッセマイネの祈り」。いづれも躍動する人たちの姿が活写されていて、彼の面目躍如といったところだ。

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 その部屋のさらに奥にあったレリーフ。超二枚目の人は一体だれ?

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 こちらは、老人の前でひざまずく女性。まるで懺悔でもしているよう。

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 同教会の先にあるピザーニ館の庭に不思議な顔が展示されていた。多分これは、ヴェネツィアヴィエンナーレの展示物のようだ。

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 大運河を渡る唯一の木造橋・アカデミア橋を渡り切ると、アカデミア美術館が目の前だ。

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 ここで、マッジョーレ教会に戻る。前回は絵画作品を紹介したが、この教会にはまだお見せしたいものが残っていた。まずは、すっきりと直線の柱が小気味よい主祭壇。軽快な構成を得意とする作者パラーディオの会心作だ。

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 祭壇の中心には球体があり、そこに聖人が立つ。

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 教会中央付近の空間に机が置かれ、レンズを組み込んだスワロフスキーのクリスタルガラスが展示されていた。これも、ヴィエンナーレ作品。

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 そのガラスに背景の祭壇上部が映り込んで、新旧のコラボ状態。

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 実際の祭壇上部はこんな具合。不思議空間が演出されていた。

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 主祭壇後方の聖歌隊席も、ここは豪華。48の素晴らしい木彫の椅子が並ぶ。

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 それぞれに木彫りの像が添えられる。ベネディクトの生涯の物語がテーマだという。

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 中に、涙を浮かべた天使像もあった。どんな意味が込められているのだろう。

 この他ティントレット作品はドゥカーレ宮殿の「天国」を始め、サルーテの祭りで紹介したサルーテ教会、サン・ザッカリア教会など至る所で見ることが出来る。もちろんアカデミア美術館を忘れてはいけない。ティントレット好きの方はどうぞ、たっぷりとヴェネツィア探訪を楽しんでください。

 なお、私は少し旅に出ますので、半月ほどブログをお休みします。来月にはまた、新しい風景をお届けしたいと思っています。





























 








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聖書の劇場化。マッジョーレ教会ーヴェネツィアにティントレットを訪ねて④

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 サンマルコ広場の対岸に浮かぶサンタ・マリア・マッジョーレ教会は、ルネッサンス末期の天才建築家アンドレア・パラーディオの代表作でもある。

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 その姿の美しさから「水辺の貴婦人」とも呼ばれる。軽やかで手前の広場の街灯ともよくマッチし、朝方などは立ち止まって見入ってしまう。

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 もっとも印象的だったのは、ある満月の夕、絶妙なバランスの鐘楼とファザードとが月光に照らされて青白く浮かび上がっていたシーン。

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 ここもティントレット作品の宝庫だ。「最後の晩餐」は、ヴェネツィアの中にも何か所か彼の作品が残されているが、最後に完成したここの作品が最も劇的で迫力を感じさせる。まるで宴会のような賑やかさ、画面を斜めに切り取った構図は、斬新さに溢れている。

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 有名なダヴィンチの「最後の晩餐」の緊張感に満ちた雰囲気とは別次元だ。左上に灯された灯りによって、右上にいる天使たちの輪郭が浮き出て、隅から隅まで躍動感にあふれた作品になっている。まるでスペクタクル劇のハイライトシーンを見るようだ。

 ただ、この絵はかなり高い場所に掲げてあり、ちょうど窓から差し込む光が真っ正面に絵を光らすので、写真に撮るのが相当難しかった。

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 その反対側の壁にあるのが「マナの収拾」。神から授かる白いマナ(食料)をユダヤ人たちが喜んで拾い集める情景が描かれている。当時ティントレットは70歳。でも全く衰えを感じさせない。

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 こちらは「聖ステファノ」。聖ステファノはキリスト教最初の殉教者。キリスト教がまだ十分に浸透していなかった時、邪教の人として、彼は都の外に引き出され、石打ちの刑にされた。だが、ステファノは自分を殺す者たちへの許しを神に祈りながら死んでいったという。

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 石にまみれながら祈る聖ステファノ。

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 その姿を見守る神。その様子をカラフルな色彩で描き切った。

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 これは「聖母戴冠」だろうか。多くの人々の中心で輝く聖母マリア。

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 光の冠がかぶせられようとしている。

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 入口近くにあるヤコボ・バッサーノ作「羊飼いの礼拝」。前回、華やかとも言えるティントレットの同名の作品を紹介したが、こちらは静謐な空間に聖母子を配置している。まるで日本画の掛け軸を思わせる縦長の構図で,上辺に天使たち,下辺に生まれたばかりのキリストとマリア、中辺は闇を配置している。

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 赤子のキリストを見つめるマリアのまなざしの優しさ!バッサーノは夜景画の名手でもあった。

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 セバスティアーノ・リッチの「玉座の聖母と諸聖人」。ヴェロネーゼ風の豊かな色彩が特徴だ。
































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ティントレットだらけの聖ロクス同信会館ーヴェネツィアにティントレットを訪ねて③

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 聖ロクス同信会館は教会ではないが、1477年にペストが流行した時、病人看護を目的に設立された施設だ。聖ロクスはペスト患者の守護聖人。建物は1549年に完成するが、内部の絵は1564年ごろから3期に分けて制作が続けられ、1587年に最終的に完成した。その中心となったのがティントレット。20年以上にわたって、まさにライフワークとして取り組んだ所だ。

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 2階に繫がる階段を上って行くと、まず正面と天井の絵が見えてくる。

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 大階段右横に広がる絵は「ペスト追放を聖母マリアに祈る聖ロクス」(アントニオ・ザンキ作)。同信会の精神を表わしたものだ。

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 階段を昇り切るとティントレットの絵画が渦巻くように展開する大広間に出る。

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 壁面は聖書から題材を撮った23枚の大絵画で埋め尽くされている。

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 最奥にあるのが、「羊飼いの洗礼」。彼の代表作の1つだ。イエス誕生の夜ベツレヘム郊外の貧しい羊飼いの所に大天使が舞い降り、救世主の誕生を告げるというエピソードに基づいたテーマ。上段右側に若々しい聖母がおり、その傍らに生まれたばかりのイエスが光を放っている。みすぼらしい家の内部だけに、余計にキリストの輝きが効果を生んでいる。

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 こちらは「嬰児虐殺」。この頃生まれた子がやがて王を滅ぼすという予言を聞いた時の王が、嬰児の皆殺しを命令するエピソードだ。

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 さらに「青銅の蛇」。これも旧約聖書で、モーゼの庶民救済の話から取ったもの。いずれも強い明暗の対比によって劇的な効果を造り出すティントレット特有の絵画群だ。広い空間を圧倒的に支配し、息もつけないくらいの迫力が漂っていた。

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 また、ここにはティツィアーノの「受胎告知」がある。ティントレットと違って柔らかな雰囲気の絵になっていて、ホッと一息つける感じだった。

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 大きな絵画群の合間合間に珍しい木製の像が並んでいる。

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 これらは1657年から64年にかけてフランチャスコ・ピアンタが制作したもの。

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 いずれも擬人像。

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 美徳、悪徳、学問、芸術などを象徴するという。

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 中には「スパイ」などという名がつけられたものもある。

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 たった1つ、タイトルと像が一致したのがこの像。目隠しされた姿は「憤怒」を象徴しているのだという。

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 同信会館の隣りにある聖ロクス教会には、入口に十字架のキリストがあった。

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 この教会で目立ったのはジョヴァンニ・アントニア・フミアーニのこの絵だった。




































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匂い立つ花々の競演ー小石川後楽園の花菖蒲

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 先日、梅雨の合間を縫って花菖蒲を見に行ってきました。場所は小石川後楽園。

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 ちょうど花が咲きそろったところで、菖蒲園全体に広がっていました。

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 1本の茎が花を咲かせるのは、わずか3日間。桜よりも短い命のはかなさもまた、この花への郷愁を誘うのかもしれません。

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 この花は江戸時代、特に武士に愛されたということです。

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 その真っ直ぐに伸びた茎の潔さ、花の持つ気品、それに「菖蒲」が「尚武」と同じ発音を持つことなどが、愛される理由だったのでしょう。

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 花の特徴は、他の花と違って雌しべが立ちあがって咲き誇ること。それが凛とした姿を形成することで、一層美しさを増して行きます。

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 それに、主流となる紫の色。昔から高貴な色といわれてきたその紫を身にまとって緑の野に花開く姿は、ドキッとするような妖艶さが匂い立ちます。

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 アヤメ、カキツバタともとても似ていて私には区別がつきませんが、一番の違いは、花菖蒲の場合花弁の元に黄色い目型模様があることだそうです。

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 この配列、尾形光琳の「燕子図屏風」に描かれたあの絵を一瞬ですが連想させました。

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 後楽園には660株、26品種の花菖蒲が植栽されているそうです。

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 花言葉は、優しさ、優雅。

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 あるいは、貴方を信じる。

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 とにかくさまざまな種類の花たちが、梅雨で湿りがちの心を明るくさせてくれました。

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 別の場所の池にはスイレンの花が。これも白さがまぶしいくらい。

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 大きな池に降るように架かる枝もまた、美しい緑のハーモニーを奏でていました。








































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ティントレットの家で陽気な作業員と会うーヴェネツィアにティントレットを訪ねて②

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 デロルト教会から道路1本と橋1つを隔てた場所、モーリ通り3399番地に向かった。そこにはティントレットが20数年間暮らした家があるはずだ。

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 運河沿いを歩いて行くと、朝降った雨がへこんだ石畳に残って、建物の姿を映していた。

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 と、手前に何やら不思議な石造の立つ細長い広場に出た。モーリ広場だ。

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 この男はシオール・アントニオ・リオバ。ギリシャから移り住んだ商人で、おそらく第4回十字軍に参加してコンスタンティノープル陥落戦を戦った人物だ。

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 石造はまだある。

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 サンディとアファーニ。リオバと合わせて3人のマステッリ家の兄弟だ。

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 彼らが手広く交易の商売をしていた拠点がこのマステッリ館。

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 広場を過ぎても、もう一人石像があった。この像の隣りがティントレットの家。

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 しかし、ちょうど改築工事中で、覆いがかけられていた。「ここがティントレットの家ですよね」と聞くと、「そうだよ。寄って行きなよ」と、現場監督らしき作業員。自分の家でもないのに、気軽に案内してくれた。
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 でも、ポルティゴを通り抜けて出たところからは、工事中なので近づけない。それで外観をちら見することしかできなかった。

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 玄関上のプレートも半分以上隠れた状態。ここには「あまたの絵画を世に送り出したティントレットがかつて住んだ家」と書かれているはず。

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 「工事が終わったら、またおいでよ」。陽気なおじさんたちの声に送られてティントレットの家を後にした。でも、「またおいでよ」って言ったって、日本から来るとなると大変なんだけどね。

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 真っ青に晴れ上がっていたいた空を、うろこ雲が覆い始めた。明日も晴れてくれればいいんだけど・・・。






























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マドンナ・デロルト教会の「聖母マリア」-ヴェネツィアにティントレットを訪ねて①

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 今回から、またヴェネツィアに戻って、ティントレットにゆかりのある教会巡りを何回か連載します。

 本島の北側、カンナレージョ地区まで行くと、あふれるほどの観光客もほとんど目立たなくなる。その一角に、珍しい石畳の広場を持つマドンナ・デロルト教会がある。

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 小規模ながらゴシック様式で建てられた教会は、1399年から1473年にかけてレンガとクロアチア石で修復された。

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 正面ファザードの左右に12使徒の彫像が立っている。

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 作者は不明だが、ヴェネツィア独特の様式を生み出している。

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 入口上には中央に聖クリストフの像。何をしているのか、ユーモラスな格好だ。

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 右には聖母マリア。こちらは理知的な表情。

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 左は大天使ガブリエル。となると、受胎告知を表現しているのかも。これらはバルトロメオ・ボンの作品。

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 そしててっぺんにも像が置かれている。絶好の天気で、空が吸い込まれそうに青かった。

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 14世紀中ごろの完成期には聖クリストフの教会だった。しかし、教会近くの菜園(オルト)に置かれていた聖母子像(ジョヴァンニ・デ・サンティ作)が、霊験あらたかであるとして、多くの巡礼者が訪れたことから、この聖母像が教会内に祀られ、「菜園の聖母の教会」(マドンナ・デロルト)と改名したという。

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 内部の見どころはティントレットの作品だ。右側壁に掲げられた「聖母マリアの奉献」は、幼子マリアが母に連れられて教会を訪れるシーンが描かれているが、夕焼けの空に向かって階段を上るマリア母子の姿がドラマチックなタッチで描かれている。いつまでも見ていたい気持ちにさせる絵だ。

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 また、主祭壇右側には「最後の審判」がある。ティントレットはドゥカーレ宮殿にも同じテーマの大絵画を残しているが、個人的にはここの絵の方が素晴らしい出来栄えになっていると思う。

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 その右隣の礼拝堂は霊廟になっている。よく見るとこの墓はまさにティントレットの墓だ。ティントレットは1518年生まれ。劇的な構図、色遣いで描かれる絵画は、強いコントラストと共にドラマチックな作品として印象づけられる。1594年ペストでこの世を去り、ここに埋葬された。本名はヤコボ・ロブスティ。父の職業が染物師(ティントーレ)だったことから、それが彼の通称になってしまった。ヴィンチ村生まれだからレオナルド・ダヴィンチとか、ヴェローナ出身のヴェロネーゼなど、結構通称が有名な芸術家は多い。

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 入口左端に、こんな礼拝堂もあった。ベルニーニの絵の写真だけが飾ってある。脇に添えられた但し書によると、この絵は盗難に遭っていまだに行方不明だとのことだ。何ともまあ・・・。

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とにかく、充実した教会空間であることは間違いない。


























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ルーブル美術館中庭の夜

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 今回宿泊したホテルから、ルーブルは目の前。朝晩の行き帰りにも中庭がメインルートになっていた。美しいスペースだが、特に観光客が少なくなる夜の風景は見ごたえのあるものだった。

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 オペラ座側からの入口門をくぐると、ドーム型の出口に中庭のピラミッドが見えてくる。これがライトアップされると、まさにこれ自体が美術作品のように浮かび上がる。

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 中庭に入ると、建物に沿って街灯が並ぶ。

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 ピラミッド。イオ・ミン・ペイの設計したガラスのピラミッドは、1989年の完成当時賛否両論が飛び交ったが、今はすっかり馴染んできている。

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 ピラミッドと後方の建物ドゥノン翼のファザードとが見えるアングルは、まさに現代と中世の融合。

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 ドゥノン翼のファザードには女神像が刻まれている。

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 ピラミッドの後方にはカルーゼル凱旋門が見える。

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 この広場にあるカルーゼル凱旋門の上には4頭の馬の像が見えるが、一時ここにはヴェネツィア・サンマルコ聖堂にある4頭の馬が飾られていた。ナポレオンがヴェネツィアを占領した時に略奪したためだ。しかしその後戻されて現在に至っている。

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 ルーブル宮は10世紀の建築だ。

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 ドゥノン翼の屋根とピラミッドの先端が交わるような角度だと、生き物がこちらを見つめているようにも見えてくる瞬間がある。

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 ピラミッドの前、凱旋門と向き合うように建つ騎馬像はだれ?

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 この後で夕食に行ったレストランで「あれはだれ?」と聞いてみると、まだ若いウエイトレスさんが「ルイ14世よ」と即答してくれた。

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 こんな豪華な風景の庭だが、普通に路線バスの通り道になっている。モンパルナスからオペラ座に繋がる83番バスなど、外の見えない地下鉄よりもずっと楽しい観光気分になれること請け合いだ。チケットはどちらも共通で使える。

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 ホテルに帰って部屋の窓を開けると、うっすらとライトアップされたルーブル宮が夜の闇に浮かび上がって見えた。




































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