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「近代洋画の父」黒田清輝の代表作が一堂に(ピカソも1枚)ー黒田記念館

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 先日散歩がてらに東京・上野の黒田記念館に行ってきました。その名の通り、この建物は我が国の「近代洋画の父」といわれる洋画家黒田清輝の作品を所蔵する美術館・研究所です。同記念館では、春、秋など年に3回彼の代表作を一挙に展示公開する特別期間を設けており、それをねらって出掛けたというわけです。

 まず、黒田のパリ画壇へのデビュー作ともいえる「読書」。黒田は当初法律を学ぶために1884年、パリへ留学しました。当時のパリは、パリコミューンの混乱を経て第三共和政が成立、オスマン知事によるパリ大改造によって、光あふれる街へと変貌していました。また、モネ、ルノワールらによる印象派の台頭で、新しい絵画の息吹がほとばしる時代でした。

 そんな空気に触れて、もともと絵が好きだった黒田は絵の修業へと目的を変え、1890年にはパリ南東60キロのグレー・シュル・ロワンという村で絵を描き始めます。そこで、素晴らしいモデルとの出会いがありました。マリア・ビョー。19歳の農家の娘。でも知的な容貌で物静かな雰囲気は、彼の創作意欲を掻き立て、1891年、この作品を完成させました。

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 柔らかでかすかな外光の差し込む室内で一心に読書に打ち込む女性の表情は、見事な情感を伴って見る者の胸に迫ります。黒田はこの作品でパリの公募展サロンに入選、パリデビューを果たしました。

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 1893年、10年間のパリ留学を終えて帰国した黒田は、その年の秋京都を訪れます。そこで出会った舞妓の姿に着想を得て、この作品「舞妓」を描きました。パリ生活の長かった黒田には、この伝統的な姿に逆にエキゾチックな魅力を感じたようです。

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 加茂川を背景に「読書」と同様に逆光による幻想味を加味した舞妓の姿。華やかな模様の振袖と端正な舞妓の容姿が作品に一層の光沢を付け加えています。モデルは小ゑんという舞妓といわれています。

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 1897年、後に夫人となる照子を伴って箱根・芦ノ湖に出かけます。湖畔で、とっさに製作を思い立ち、この作品「湖畔」が生まれました。

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 「私の23歳の時、夫が湖畔で制作しているのを見に行きますと、そこの右に腰掛けて、と申しますのでそう致しますと、よし、明日からそれを勉強する、と申しました」。照子夫人の述懐です。

 黒田は1898年東京美術学校(現東京芸術大学)の教授となり、若手の指導にも力を注ぎます。

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 そんな中で翌1899年、大作「智・感・情」を完成させる。当時国内ではまだ裸体画を決して一般的には認められてはいませんでした。しかし、あえて彼は美の追求の過程でそのタブーを取り払うことにも尽力しました。

 「どう考えても、裸体画を春画とみなす理屈がどこにある。日本の美術の将来にとって必要なのだ。大いに奨励すべきだ」。

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 タイトルは、それぞれの主義の象徴として名付けられたようです。「智」は理想主義を表現。

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 「感」は印象主義。

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 「情」は写実主義。いずれもくっきりと表現された強い意志に裏付けられた主張を持った作品として光を放っているように思えます。この作品は1900年のパリ万博に出品されました。

 1922年には帝国美術院院長となり、我が国美術界のトップに立ちましたが、1924年、58歳で狭心症により死去しました。

 実にきっぱりと,ストンと胸に飛び込んでくる作品ばかり。中でも個人的には「舞妓」は非常に魅力的でした。

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 その帰り、この5月で改修のため長期の休館に入るブリジストン美術館に寄りました。ここは撮影禁止なのでパンフレットからピカソの「腕を組んで座るサルタンバンク」を1枚。

 サルタンバンクとは流浪の旅をしながら芸をする下層階級の軽業師のこと。庶民に向ける温かい眼差しを感じる作品。

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 実はこの作品、ピアノの巨人ホロヴィッツが25年にもわたって所持していたもの。60年間も故郷ロシアを離れていたホロヴィッツにとって、放浪の軽業師への共感がこの作品への愛着となったのかもしれません。

 今週、イタリアからフランスへ行ってきます。それで、このブログは少しの間休載します。4月後半にはまた新しいヨーロッパの風景と物語をお届け出来ると思います。それまでしばしの間 arrivederci !




























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