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流転の運命を負わされた幻の名画・・・シュテーデル美術館③

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 シュテーデル美術館には印象派以降の作品も豊富だ。これはモネノ「昼食」。彼が終の住処としたジベルニーの家だろうか。

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 同じ食事風景でも、こちらはルノワール。タイトルは「昼食後」で、確かにテーブルには料理ではなくコーヒーカップが並んでいる。

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 スイスの山岳風景を描き続けたアルプスの画家セガンティーニ。

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 室内にたたずむ女性の後ろ姿などを描いて不思議な雰囲気を醸し出すデンマークの画家ハンマースホイ。沈黙の中にもなにか胸騒ぎがしそうな風景。

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 一方、とてもやさしい、心休まるポートレートは、オットー・ショルデラー。

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 ジョージ・バゼリッツはテーマをすべて逆転して描く新表現主義の旗手。

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 シャガールも2点あった。

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 その中では、人が飛んでいるこちらのほうが親しみがあった。

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 ピカソ。「フェルメンデ・オリビエの肖像」。

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 一巡するのに2時間以上かかってしまった。ドイツの銀行家シュテーデルが収集した作品群は多種多様。高いクオリティを誇っていた。ちょっと疲れたので館内のカフェで一休み。

 ところで、この美術館に関係する興味深いエピソードがある。バブル期に当時の史上最高額で売買され、その後稀有の運命を背負ったゴッホの作品「ガシェ医師の肖像」は、実は、かつてこの美術館に飾られていたものだ。

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 ゴッホがこの絵を描いたのは1890年。自らの最期の地となったオーベル・シュル・オワーズでのこと。まだ無名だったゴッホの作品は、遺族によって画商に売られ、1911年にシュテーデル美術館が購入し、同館に飾られることになった。

 しかし、次第にドイツは暗雲に包まれ始める。ナチス政権の発足だ。ナチは「退廃芸術の一掃」と称して多数の作品を没収、「ガシェ医師・・・」もゲーリングが強奪の上資金調達のためコレクターに売り飛ばしてしまった。

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 この絵が市場に姿を現したのは、1990年5月15日。クリスティーズがニューヨークで行ったオークションだった。2000万ドルで始まった競りは、ものすごい勢いでつりあがり、最後には8250万ドル(約124億円)という、当時の史上最高値で日本人がこの絵を競り落とした。その落札者が大昭和製紙名誉会長の斎藤了英氏。

 その後、バブル崩壊、贈賄罪で有罪となった斎藤氏は1996年に死去、「ガシェ医師の肖像」は表舞台から消え去ってしまった。

 実は、紆余曲折を経て、オークション会社サザビーズが所有しているとの話もあるが、権利関係が複雑に入り組んでおり、表舞台に出ることが困難との説が有力だ。

 つまり、一般大衆が自由にあの名画を鑑賞出来たのは、1911年から20数年間のシュテーデル美術館時代と、一時所有していたドイツの金融業者がニューヨークに移住し、メトロポリタン美術館に貸し出していた1時期だけだったということになる。

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 実は、同名の肖像画はもう1枚ある。これはゴッホが求めに応じて同じ作品を2枚描いたためで、こちらはパリのオルセー美術館に展示されている。

 フランクフルトから姿を消し、ナチスによって流転の運命を背負わされた悲劇の絵は、いつ安住の地で美術を愛する人たちの優しい眼差しに接することが出来るのだろうか。

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 出来れば、シュテーデル美術館で出会った企画のように、2枚の絵が並んで展示される日が来ることを祈るばかりだ。

 ナチスが「退廃芸術一掃」の名目で美術品を押収した歴史にかかわって、今まさに2つの映画が完成した。1つは現在上映中の「ミケランジェロ・プロジェクト」。押収された美術品の奪還作戦だ。もう1つは来週封切りになる「黄金のアデーレ」。やはり押収されたクリムトの傑作「アデーレ・ブロッホ・バウアーの肖像」のその後の顛末を描いた作品。戦後70年、区切りの年ということでこうした企画が実現したということなのだろうか。




































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コメント

gloriosaさん、こんばんは。
シュテーデル美術館は入ったことがない美術館です。

「ガシェ医師の肖像」は描いたゴッホと関係無いところで数奇な運命の中で時代に翻弄されて現存しているのですね。クリスティーズでの落札のニュースは覚えています。当時他にもバブルの勢いで日本人が高額の絵画を買い取った時期がありましたね。

本当にいつの日か2つの絵画な並んで展示されているのを眺めて観たいですね。

投稿: omoromachi | 2015年11月18日 (水) 23時24分

omoromachi様

 こんばんは。フランクフルトは何度か通りましたが、いつもトランジットで、ちゃんと街を歩いたのは今回が初めてでした。美術館も予想外に充実していましたよ。
 「ガシェ医師の肖像」に関しては今回の旅行に際して調べているうちにその運命的なストーリーを改めて確認した次第です。作者のゴッホの人生そのものがドラマチックなのに、作品までドラマチックだなんてなかなかですよね。

投稿: gloriosa | 2015年11月19日 (木) 22時03分

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