夕景・夜景

カイザー・ヴィルヘルム旧教会の夜景を仰ぐ・・・ベルリン㉖

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 ベルリンの西側、分断されていた時代には西ベルリン随一の繁華街として栄えたクーダム地区・ツオー駅近くに、異様な存在感に溢れた教会が建っている。
 
 カイザーヴィルヘルム教会。1895年、初代ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世を偲んで建設されたネオロマネスク様式の建物だ。
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 第二次世界大戦中の1943年11月23日、連合軍の空襲によって破壊された。ただ、主塔部の形は残っていたため、広島の原爆ドームと同様に戦争の記憶を絶やさないための記念として保存されている。
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 夕方地下鉄でツオー駅に行き、駅を出るとすぐに、その姿が目に飛び込んできた。
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 空が夕闇に沈みゆく中で、ライトアップされた教会が浮かび上がる。
 建設当時には113mもの高さを誇った尖塔は、破壊されたとはいえ圧倒的な迫力で立ちはだかる。
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 ベルリンでは368mのテレビ塔が最も高い塔だが、こちらの塔のほうがずっと強烈な存在感を放っている。
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 間近から見上げる塔の迫力!
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 よく見ると、時計だけはしっかりと時を刻んでいた。
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 1961年には、この塔の前後に低層の八角形の新教会(右)と六角形の鐘楼(左)が建てられた。
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 新教会はもう閉館していたが、内部の照明は点灯していたため、青い箱が目立っていた。
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 近寄ってみると、こちらも結構大きい。
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 東方向を見ると、旧教会の後方にベンツのマークが。あのビルはオイローパセンター。
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 反対側にも高層ビルが建っている。
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 新教会のステンドグラスの一部を外側からアップしてみた。とても美しい。
 ぜひ改めて明日は教会に入ってステンドグラスを観賞しよう。
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 駅への帰り道、公衆トイレを見つけた。こんな可愛らしい小便小僧のイラストが!
 

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夜空に浮き上がるピンクの幻想~六義園の桜

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 六義園の夜桜を見に行きました。
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 六義園(東京都文京区本駒込)は、1702年に川越藩主柳沢吉保が築園した日本庭園。明治期には三菱の創業者・岩崎彌太郎の別邸となっていました。
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 個々の枝垂れ桜は、東京でも3本の指に数えられるほど有名で、ライトアップが始まったとのニュースを聞いて、出かけてみました。
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 行ってみると予想以上の大混雑。写真ではそうは見えませんが、係員が「桜には触らないで」「桜の前に立ち止まらないで」 など、まるで名画の特別展示場のような雰囲気。
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 さくらはほぼ満開で、優しい花びらが柔らかい日差しに映えています。
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 日が陰ると、周りはピンク一色に染められます。
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 園内には、茶屋や池など、大名庭園らしく格調高い景色が広がります。
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 日が暮れて、ライトアップが始まりました。
 まだ青い空を背景に枝垂れ桜が光を浴びて浮かび上がります。
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 ただ、内庭大門の枝垂れ桜は、押すな押すなの大混雑でまともに写真を撮るスペースはありません。
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 それで、庭園奥にあるもう1つの枝垂れ桜のところに行きました。
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 こちらは人も比較的少なめ。高く伸びた枝が空に向かって広がり、少し彩色されたさくらが照らされて幽玄の風情を見せていました。
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 同じ木でも、角度が違えば枝ぶりの変化します。
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 乱れ落ちる滝のようなさくら。見事としか言いようがありません。
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 特に、日没後十数分間の、青から藍へと変化する空をバックにしたさくらの華やかなピンク、ホワイトの花びらは、今でも目に焼き付いています。
 

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フンボルト大学でのプロジェクションマッピング・・・ベルリン⑮

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 ジャンダルメン広場から少し北に進むと、フンボルト大学の旧王立図書館があり、その壁面に鮮やかな宮殿が映写されていた。
 この建物は、もともとはウイーンの宮廷のためにヨーゼフ・エアラッハ(ウイーンのバロック建築の巨匠)が設計したものだった。しかし実現せず、その設計書がベルリンの建物に転用されたという。従って、宮殿の映像に全く違和感がない。
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 非常に大きな建物の幅全体を使って映写されているため、広場の最後方まで下がっても全体がカメラに入りきらなかった。
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 その北側には実ににぎやかなプロジェクションマッピングがあった。
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 ショッピングモールのような店が揃い、2階にはイスラエルの文字が見える。
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 それが、一転して図書館の続きのような宮殿風の建物に。右上には「フェスティバル・オブ・ライト」と、このイベントのタイトルが表示された。
 
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 次にはまた、お祭りのような映像が。
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 左上にはドイツ国旗がはためいている。
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 右の中ほどには、なんか見たことのある顔が映っていた。そう、メルケル首相だ。子供たちに取り囲まれながらの交歓風景だ。
 こうした政治色のないイベントなのに、一国の首相がさりげなくフィーチャーされているというのは、首相が国民の厚い信頼を受けていることの反映なのかもしれない。
 事実、メルケル首相は2005年の就任以来、もう11年もの長い間政権を維持し続けている。ちなみに、この間日本では小泉純一郎首相から現在の安倍首相まで実に8人もの首相交代がなされている。
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 ウンター・デン・リンデンを横断して向かい側の通りに出た。こちらの建物はフンボルト大学本部のあるところ。
 ここのマッピングは、白い火の玉が爆発したような不思議な映像。
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 中庭の中心に立つのは、この大学の創始者であるウイルヘルム・フンボルト像。
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 この大学は、ヘーゲル、ショーペンハウエルといった哲学者、童話のグリム兄弟、細菌学の権威ロベルト・コッホ (留学時代の森鴎外が師事していた)らが教鞭をとり、ビスマルク、ツルゲーネフ、リルケ、マルクスなどが学んだ、ドイツ随一の伝統と権威を誇る学校だ。
 

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ベルリンで最も美しい広場・ジャンダルメン広場・・・ベルリン⑭

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 それは、中層のビル群が建ち並ぶ繁華街、フリードリッヒ通りを東に曲がった時、突然視界に入ってきた。
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 暮れなずむ藍色の空をバックに、円柱のような塔が白く輝いている。
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 まるで航海を終えようとする船が、陸に見つけた灯台のごとく、温かく優しい光を放っている。ドイツ聖堂。1701年に建てられた教会だ。
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 ここはジャンダルメン広場。ドイツ聖堂と対をなす形で、北にフランス聖堂が建ち、
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 中央にコンツェルトハウス・ベルリンがある。
 広場の面積は4800㎡の長方形をしており、均整のとれた建物の配置とおおらかな広がりは、「べルリンで最も美しい広場」と呼ばれている。
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 中央のコンツェルトハウスにプロジェクションマッピングが行われていた。
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 ただ、それほどダイナミックなものではなく、ファザードに映された黄色の形が徐々に崩れていくというもの。
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 少し崩れだし、
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 ギザギザに解体した。
 コンサートホールは19世紀のもので、第二次世界大戦後、1984年にオリジナル通りに再建された。
 戦前はワーグナーが自らの作曲した「さまよえるオランダ人」をここで指揮したこともある。
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 やっぱり、ここではドイツ聖堂の素朴なイルミネーションが一番美しく見えた。
 
 
 

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巨大トランプが点滅する広場・・・ベルリン⑪

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 ポツダム広場の地下鉄駅前にくると、何やら巨大トランプの形をした板がずらりと並べられて、点滅している。
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 これも「光の祭典」の一環。トランプだから、52枚のカードが積み重なっていて、それが次々と点滅してゆく 。
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 そのトランプの前で記念撮影するカップルも。
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 よく見ると、カード1枚の大きさは1m以上。
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 近づいてみたら、こんな女性の絵が描かれていたり、
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 急に中央部分の照明が消えてしまったり、いろいろと変化して見どころ一杯。
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 トランプの列の向こうには、ソニーセンターのビルが全館点灯されて輝いており、そのコラボレーションが面白い。
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 周囲ではスマホでの撮影をしている人たちが沢山いた。やっぱりベルリンでもスマホ全盛のようだ。
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 すべてのトランプが明るくなるのを捉えようと10分ほどスタンバイして、やっと撮れたショットがこれ。
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 翌日この広場を通った時に見た、昼のトランプ。ずいぶん雰囲気が変わるようだ。
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 再びソニーセンターに戻って、片隅にピンクに染められた場所があった。これも「光の祭典」の一環。
 ここは、戦前最高級ホテルとして名高かったエスプラーデホテル「皇帝の間」の部分。 第二次世界大戦でホテルは焼けてしまったが、一部焼け残った「皇帝の間」が、再開発時に同センターの一角に移築保存されたという。
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 のっぽビルには暖色系の照明が当てられていた。
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 ブランデンブルク門 近くまで戻ると、アメリカ大使館の建物も祭典に協賛してか、こんなイラストレーションを壁に投影していた。「統一、平和と自由、25年」って、ベルリンの壁が崩壊してベルリンが再統一された1990年から25年ということを言っているのかも。
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 その近くのビルも。
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 さらに、周りを徘徊していた“電飾人間”にも出会った。
 
 

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ベルリン大聖堂にハートマークが!・・・ベルリン5

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ベルリン2日目の夜は、大聖堂のプロジェクションマッピング見物に出かけた。こちら大聖堂前広場は人で一杯。10月も中旬となると夜はかなり冷え込むが、広場は熱気さえ伝わってくるような感じだった。
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 ただ、こちらのマッピングは全体的に照明が弱く、 大聖堂がくっきりと浮かび上がらない。黄金に染まったこの場面くらいがまずまずというところ。
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 このイラストは、「壁」に描かれていたデザイン。
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 全体がぼんやりしていて、何を表現しているのかがわかりにくかった。
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 こちらは歴史上の偉人たちのようだ。
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 アップにしてみるとこんな具合。この大聖堂に安置されているホーエンツォレルン王家に関わる人たちだろうか。手前の白い部分は噴水だ。
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 こちらも歴史上の出来事を表しているようだが、どうもはっきりしない。
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 これもよくわからない。残念!
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 今度は全体が縞模様に包まれた。
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 そして、赤と白のハートマークが浮き上がった。これはわかりやすいイラストで、観客の拍手が沸き上がった。
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 少し場所を移動して、テレビ塔が一緒に移るような角度で撮影してみた。
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 やっぱり、ハートマークが一番わかりやすかった。
といった訳で、大聖堂プロジェクションマッピングの撮影は、あまりうまくは出来なかった。

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未明の闇にブランデンブルク門が浮かび上がる・・・ベルリン③

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 翌朝、改めてブランデンブルク門に出かけた。前日はイベント初日ということもあって群衆のざわめきの中での鑑賞だったので、無人の静かな夜明けの中で、門をじっくりとみたいと思ったからだ。

 この日の日の出は7時22分。約1時間前に地下鉄に乗り門に向かった。滞在のホテルは中央駅前にあり、最近できた地下鉄U55を使えば、数分で門に到着する。

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 地上に出てみると、まだ暗い青の広がる空を背景に、白熱灯に照らされた門が、オレンジ色に浮かび上がっていた。

 18世紀末、アテネ・アクアポリスの門をモデルに築かれた門。プロイセン王国の凱旋門として建設されたのだが、第二次世界大戦後の冷戦時にはこの門も壁に囲まれ、東西ベルリン分断の象徴としての印象が強くなってしまった。

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 上部にある4頭立ての馬車(カドリガ)と、それに乗った勝利の女神も金色に輝いている。

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 このカドリガは、普仏戦争に勝利したナポレオンに奪われて、1806年に一時パリに持ち去られたが、7年後のライプツィヒの戦いで勝利して取り返したといういわくつきのものだ。

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 そんな歴史を踏まえてか、前夜のプロジェクションマッピングにも馬が登場していた。

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 しかも、その馬が空に向かって飛び立つ光景が演出されていた。

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 門の脇には、独特の形をした街灯と、その上空に細い細い三日月が姿を見せていた。

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 徐々に空が明るくなり始めた。右側の大きな建物はホテルアドロン。ドイツ随一の五つ星ホテルとして、チャップリン、アインシュタイン、トーマスマンなど世界各国のエスタブリッシュメントが利用したホテル。

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 夜明けだ。ウンター・デン・リンデン通りの向こう、空が燃えるように赤く染まった。

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 ここからは、前回紹介しきれなかったマッピングの残りを紹介しよう。鳥の羽ばたく場面。

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 門が白く輝く。

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 縁どり付きの門

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 街は夜のまどろみから、次第に朝の目覚めへと移って行く。

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 すっかり朝が明けた。イベント時の混雑と、早朝の静寂とを半日のうちに体験できたのは、とても心躍る体験だった。
































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ブランデンブルク門で「光の祭典」を見る・・・ベルリン②

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 ベルリンに着いたのが「光の祭典」の開始当日。チェックインしてすぐブランデンブルク門のあるパリ広場に出かけてみた。 

 ただ、まだ日没前だったので、近くで早めの夕食を済ませ、改めて門に戻った。

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 到着してみると、もう門に映像を投射するプロジェクションマッピングはスタートしていて、門の前は大混雑。人垣をかき分けながら写真の撮れるポジションを探し、人々の頭越しに撮影を試みた。

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 この門は、ベルリンを取り囲む18の門のうちの1つ。ベルリンの西90キロにあるブランデンブルクにつながる門ということで、この名称が付いている。

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 そもそもはプロイセン王国の凱旋門として築かれたものだ。

 マッピングは次々と変化して、こんな炎がはじけるような演出も。

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 遠くから見るとそんなに大きくは見えないが、高さは26mある。

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 全体がブルーに変わった。

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 門の幅は65,5m。あちこちでのスマホでの撮影がしばしば画面に映りこんでしまうのはしかたがないか・・。

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 門には6本のドーリア式の円柱が立ち、5車線になっている。

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 あれあれ、ベートーベンが登場した。

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 次にはピアノ。やっぱり音楽の偉人を沢山輩出している国ならではのマッピング。

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 中央の通路は王家の馬車専用道になっていた。幅が5.6mと広い。

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 対して、両脇の計4本の通路は一般の人たちが通る道で、幅3.6mとちょっと狭目になっている。

 こんな風にプロジェクションマッピングは数人のアーティストによる競作の形で投射された。初日ということで人も多く、もみくちゃになりながら、でも楽しく見ることが出来た。

 ただ、ルーアン、シャルトルなどフランスの各地で見てきたマッピングは、大聖堂という大きなスクリーンへの歴史的なストーリーを基にしたマッピングだったが、ここは門の幅の狭さ、ストーリーの浅さなどから、少々物足りなさを感じるものだったかなあ。
































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主役は空。シラクーサのドゥオモ広場で夜景に見入る

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 日の暮れゆく中で、改めてドゥオモ広場を眺めている。細いカヴ-ル通りから急激に空間が膨張するように広がる。

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 手前左側には市庁舎。

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 その先にはドゥオモ。

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 右側にはベネヴェンターノ・デレ・ボスコ館。いずれもバロックの華やかなファザードを持つ館が広場を取り囲んでいる。

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 広がった空間は、その先で次第に狭まって行き、奥に建つサンタルチア・アッラ・バディア教会によって閉じられる。

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 その変則楕円の形状は、周囲の高さを持たない建築群によって、空に突き抜ける空間を強調する結果となる。あくまでも澄み切った青空から、

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 じんわりと深みを加えた藍へと変わり始め、

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 漆黒の闇に色彩を変えて行く昼から夜への変化を、建築群を照らすオレンジの照明がさらに強調し、他のどこにもない唯一無二の劇的世界がここに生まれることを、この広場に立って初めて実感した。

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 その興奮は、帰り道でももう1度高められた。カヴール通りが“燃えていた”。

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 白い蛍光灯などは一切使わないオレンジの照明は、通りの両側に接するように建てられた館を照らして、かつて見たことのないほどの濃さで輝いていた。

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 まるでロウソクの灯の中を歩いているような色彩感。

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 ホテルのオーナーが熱心にこの通りを勧めてくれた理由がよくわかった。

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 そんな通りの一角で、こんな和風のイラストをみつけた。ほっこりとした気持ちでゆったりと帰路に着いた夜だった。














  

















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「最後の一片の残光」をメロスの気持ちで眺めるーシラクーサの夕陽

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 街を夕焼けが包み始める。夕陽を見に海岸に向かった。

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 海岸に通じる道も狭い。キケロが訪れ、アルキメデスが駆けた2000年以上前の時代からあったであろう、このような小路歩くことの喜びの気持ちも湧き上がってくる。

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 前方に街灯を見つけた。まだ灯は点いていないが、夕焼けの空をバックに、まるで点灯しているかのように赤みまで帯びている。どこか懐かしい風景。

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 石畳の坂もすっかり黄金色になっている。カップルが通り過ぎた。道に映された2人の影。ほのぼのとした黒さ。

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 海岸にはヨットが係留されていた。船の存在だけをシルエットにしてキラキラとさんざめくに光の粒が、海面を埋める。

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 この海面はイオニア海の西端近くに当たる。ここからほんの少し西に行けば、もうそこは地中海だ。

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 日はさらに傾き、ちょうどヨットの帆の先端にかかってきた。日常の何気ない営みとして、太陽は昇り、また沈んでゆく。

 悠久の営み、そのごくごく短い一瞬の時間を与えられて、私たちは生きている。でも、その一瞬でさえも、何と劇的で変化に富んだ光景を見せてくれるのだろうか。

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 また広場に戻った。ドゥオモのファザードが夕陽の残り火を受けて、暗く色づいている。

 ああ、こんな時間だったのだろう。メロスがシラクスにたどり着いたのは・・・

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 そう、このシラクーサは、太宰治が綴った「走れメロス」の舞台でもあるのだ。

 時代は紀元前5~4世紀ごろ、暴君として登場するのが僭主ディオニュシオスをモデルとしたと思われる「シラクス」という国の王・ディオニス。王を懲らしめようとして簡単に逮捕された村の牧人メロスは、妹の結婚式に出席するため、友人のセリヌンティウスを人質に、3日の猶予をあたえられた。

 3日後の日没までに帰らなければ、友人が処刑されてしまう。

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 妹の結婚を見届けた後、さまざまな妨害、障害を乗り越えて、メロスはぎりぎり「夕陽を受けてきらきら光るシラクスの市の塔楼」が見える所までたどり着く。

 「あなたは遅かった」。知人に言われて、赤く染まった夕陽の空を見上げてメロスは叫ぶ。

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 「いや、まだ夕陽は沈まぬ」。

 そして「最後の一片の残光も消えようとしたとき、メロスは疾風の如く刑場に突入した」。

 そんな、太宰の熱い筆致を思い出しながら、シラクーサの日没を見つめていた。






















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