シエナ 6 未完のファザード
ドゥオモの正面から見て右側に、工事途中のままの壁のようなものがある。これは実は大変な歴史の遺物だ。1339年、現在のドゥオモの建設がほぼ終わろうとする時に、フィレンツェのドゥオモを凌駕する世界最大の規模の大聖堂に改築しようというプランが持ち上がった。長軸80m、短軸52mという当初計画の、長軸部分を短軸にして拡大しようというものだった。従って建物の正面を90度転回することになるわけで、当初計画から90度ずれた場所に新しいファザードの建設が始まった。しかし、ペストの流行、政権交代、財政難などの原因で計画は挫折、フィレンツェに勝つという夢も潰えて建設半ばの壁だけが残ったというわけだ。
しかし、この部分も現在立派に活用されている。ドゥオモ付属美術館の3階奥から、この未完のファザードに通じる階段が通じており、屋上から街の素晴らしいパノラマを見ることが出来るようになっている。美術館の入場料だけで、追加料金はいらない。ただ、屋上は狭いため、私が行った時は入場制限がかけられていて、30分ほど待たされた。でも、絶対昇ることをお勧めします。マンジャの塔とカンポ広場の全体をすっぽりと一枚の写真に収められるのはここだけ。360度のトスカーナの田園風景も堪能できます。
華麗なドゥオモの現ファザードも、こちらからは裏側が見える。
ドゥオモからの帰り、もう一度カンポ広場に立ち寄った。シエナ出身者たちはこのマンジャの塔を誇りに思っており、市民は自らのことを「マンジャの塔の下に生まれた」と表現するそうだ。
近くのリストランテで食事をして帰りには広場のライトアップが始まった。
空のアズーリが美しい。
この広場で行われるパリオはまだ見ていないが、いつかは見てみたいものだ。
ドゥオモの裏側に洗礼堂がある。見過ごしがちだがヴェッキエスタらのフレスコ画で天井画埋めつくされた空間だ。ピッコローミニ図書室に比べれば地味だが、趣がある場所だ。つい写真を撮り忘れてしまったが、中央にある洗礼盤(ヤコポ・デッラ・クエルチャ作)の周囲にはトスカーナ彫刻の傑作といわれる青銅製の浮き彫りパネル6枚がはめ込まれている。クエルチャの他ドナテッロやギベルティらが洗礼者ヨハネの生涯を描いている。
こんなきらびやかな障壁画も。
上を向きっぱなしで首が痛くなってきた。
滞在最終日は雨。マンジャの塔も霞んでいた。
カンポ広場近くの通り。濡れた石畳に反射したライトの明かりが、古都の哀愁を蘇らせたように思えた。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント