アントワープ 大聖堂とフランダースの犬
ノートルダム大聖堂は16世紀フランドル地方最大のゴシック教会として建てられ、現在は世界遺産に登録されています。鐘楼の高さは123mあります。
入ってみて驚くのが、堂内空間が同時代の他の教会と比べて格段に明るいこと。壁や天井の白い輝きは日ごろの丁寧な管理の賜物なのだろうと感心させられます。この場所が主祭壇です。
上の写真の中心部分にある絵画のアップ。ルーベンスの「聖母被昇天」です。17世紀の作品ですが、ルーベンス特有の躍動感が絵画全体に満ち満ちていますね。ヴェネツィア・フラーリ教会のティツィアーノの「聖母被昇天」ではマリアの悲壮感漂う表情が印象的ですが、ルーベンスになるとマリアは楽しそうに天に昇って行きますね。
主祭壇の両側に「キリスト昇架」と「キリスト降架」が並んでいます。向かって左側が「昇架」の方。キリストが十字架にかけられようとする情景を描いています。三連画の中心部分だけで縦4・6m、横3・4mという大きな絵画です。劇的な場面を得意とする彼の面目躍如といった感じですね。この絵は当初、前回紹介したステーン城のあるステーン広場にあった教会のために描かれたのですが、1816年にこちらに移されたものです。
右側にあるのが「キリスト降架」。「フランダースの犬」の主人公ネロとパトラッシュは様々な苦労の末にクリスマスにこの教会に到着します。そして念願だったルーベンスのこれらの絵を稲妻の光で見ることが出来、間もなく天に召されて行きました。そんな悲しくも美しい最期が、この教会を舞台に展開されています。
クリスマスはもちろんキリストの誕生日。そしてここにある絵画はキリストの最期の場面を描いたもの。作者は、受難の連続だったキリストの生涯とネロの最期とをこの教会によってリンクする形で作品を終結させたのでしょう。ただ、フランダースの犬はイギリスの作家の作品で、現地の人にはあまり知られていないとのことです。
ステンドグラスの美しさもここの教会の特色でしょう。前の時代まで主流だったロマネスク建築が厚い壁と小さい窓の建物だったのに比べて、重力を分散させるフライング・バットレスの導入によるゴシックに変わったことで大きな窓が取れるようになり、壮麗なステンドグラスと明るい室内が実現出来ました。
これだけ遠くから見ても人物たちの動きがわかりますよね。
まさに「白亜の殿堂」といった感じの美しさです。
彫刻も多彩です。白大理石の聖人とエンジェルの像。こんな組み合わせは珍しい。
こちらはおなじみのモチーフ・聖母子像。この聖母は慈悲の心を体現するようなおおらかな雰囲気を持っています。実は、この像のレプリカが日本にあります。あの阪神大震災の時、神戸の六甲カトリック教会も大きな被害を受けました。その教会に以前ベルギーの司祭がいたことがあり、この司祭の甥がアントワープの市会議員として震災を視察に訪れ、被災した人たちへの励ましと復興の願いを込めて、震災翌年にレプリカを寄贈したとのことです。意外なつながりがあるものですね。
こんなモーゼのような像もありました。次回はブルージュに行きましょうか。
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