ウイーン 小路巡り

ウイーン 旅立ちの朝に 第三の男のロケ場所

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 ホテルのチェックアウトには少し時間があるので、王宮付近まで散歩に出た。滞在中毎日通ったリンク通りにある国会議事堂前のアテナの女神像とも今日でお別れ。遠くにシュテファン大聖堂の尖塔(左端)も見える。

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 アテナ像の下にあるこの優雅な像は、ドナウなどハプスブルク時代の領内の川を擬人化したものだそうだ。

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 王宮近くにあるパラヴィチーニ宮殿を見つけた。これはあの名作「第三の男」で、オーソン・ウエルズの友人が事故にあったとされる現場の建物だ。

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 ちょうどその前を馬車が通った。絵になるなあ。

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 玄関入口にはアントン・ツァウナーによる古典的な女性像が4体並んでいる。この像をある作家は「理想郷の泉のほとりで、水甕を頭に載せたまま井戸端会議に花を咲かせる娘たちのような風情」と描写している。確かにまったりした雰囲気だ。

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 王宮前に戻ると、また白馬の馬車が通りかかる。何とも中世風だ。

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 などと思いながら馬車を見送っていると、王宮のまん前にスターバックスの店があるのに気付いた。カフェ文化の誇り高いウイーンのど真ん中にもアメリカ資本の現代的な店が出来ていたことに、ちょっと意外な気分。

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 ウイーン伝統のカフェに行きたくなって歩いている最中に通りかかったミノリーテン教会で、これまた意外な発見をした。何と、内部にあのダヴィンチの「最後の晩餐」の絵が・・・。よく見るとコピーであることがわかるが、ミラノの絵がどうしてここに再現されているのかはわかりません。

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 カフェ・ラントマンに座った。クリムト、フロイト、マーラーらが訪れた歴史的なカフェ。日曜の朝は、朝食を摂る人たちでにぎわっていた。家族連れが多い中で、旅行者、カップル、老人。雑多な人たちののどかなおしゃべりが、高い天井に反響する。帽子をかぶり、十字架のイヤリングをしたレディの笑顔、政治面を読んでいるのか、額にしわを刻む老紳士、食器の触れ合う金属音。そんな人と音とが混じり合う空間を支配するのが、コーヒーの濃厚な香りだ。

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 窓の外にはヴォティーフ教会の絹糸のような細長い塔が見える。

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 遠くに通り過ぎるトラムの音を聞きながら、ヴォティーフ教会を建設したフランツ・ヨーゼフ皇帝の時代を想いながら、旅人はウイーンの朝に名残を惜しむ。

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ウイーン 最後の夜の街歩き

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 ウイーン滞在最後の日、中世ウイーンの名残を求めて街に出た。

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 グラーベン近く、ヴォーグナー小路にある16世紀創業というエンゲル薬局の壁面には、天使像が入口両側に描かれている。

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 服装の色合いが上品で、広げた羽根もまた美しい。

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 同じ通りにはこんな看板もあった。黒い駱駝館のラクダの看板。レストランだ。

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 次第に夕闇が迫ってきた。空がピンクに色づいて情緒たっぷりになるこの時間帯が、たまらない。

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 グラーベンの通りから少し奥まって建つペーター教会はウイーンで2番目に古いという。祭壇の美しさは格別なものがある。

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 珍しい楕円形の天井画が印象的。聖母被昇天が描かれている。

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 教会から出ると、外はすっかり夜。北側のクレント小路に足を踏み入れると、グラーベンの賑わいとは打って変わって静寂が支配する。石畳、オレンジ色の街灯、高さを揃えたバロックの館が緩やかなカーブを描く。

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 この道を今、例えばモーツアルトの遺体を載せた黒い馬車が通り過ぎても、全く違和感がないだろうと思わせる佇まいだ。

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 実はこの通りにある小さなレストランで夕食にしようと思っていたのだが、予約で一杯だった。仕方なく通り一つ隔てたビアレストランに入った。

 さあ、そろそろホテルに帰ろうか。

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 王宮のミヒャエル門をくぐった時、突然あの完璧なスタイルをしたシシーの幻が目をよぎった。よく見ると右側のドアが開いており、内部のシシー博物館の入口が見えたのだった。身長172cm、体重50kg、ウエスト50cmと、飛び切りの容姿を誇った皇妃エリザベートのシルエットが扉に描かれていた。

 今回は時間がなくてエリザベート関連の史料はほとんど見ることが出来なかったが、最後の夜にお別れのあいさつに出向いてくれたシシーに感謝!

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 さらに、新王宮の前に差し掛かると、玄関に次々と車が到着し、着飾った人たちが、壁面に沢山の国旗を掲げた王宮に吸い込まれて行く。そう、今夜もまた、王宮で舞踏会が開かれるのだ。

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 こうしてウイーンの早春は軽やかに暮れてゆき、広場の片隅では、香水の残り香が束の間の華やかさを漂わせて、消えた。

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ウイーン 美しきランタン小路からドナウ運河へ

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 美術関係の話から、街歩きに戻ろう。シュテファン大聖堂の北側、ベッカー通りには、活版印刷術の発明で有名なグーテンベルグの像が建っている。彼はドイツ人で、ウイーン出身でもないが、この界隈には印刷所が多くあったことからこの像が造られたといわれている。ここから通りを東に進む。

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 途中、右に折れると皿より大きなウインナ・シュニッツェルを提供することで有名なレストラン「フィグルミュラー」の店がある。

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 食の誘惑に負けずにまっすぐ進むと、左手にあるのがイエズス会の大きな教会。イエズス会は反宗教改革の先鋒として豪華な教会建築で人心を引き留ようとしたことでも知られる。ローマのジェズ教会などはバロックの豪華建築の代表だ。

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 その例にもれず、この教会も豪華。

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 この天井は実は平面。いかにもクーポラがあるようなだまし絵のフレスコ画になっていた。

 その先辺りからシェーンラテルン小路が始まる。

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 道なりにカーブして行くと、怪物バジリスケンの看板がみつかる。バジリスケンとは、雄鶏とヒキガエルの子供で、一睨みで生き物を殺してしまうという伝説上の怪物だ。人々はこの怪物に苦しめられていたが、ある日、勇敢で頭の良いパン職人が、大きな鏡を持ってバジリスケンに立ち向かった。バジリスケンはその鏡で己の姿を見た瞬間、にらんでしまい、自らが死んでしまったという。その怪物の名前を付けたレストランだ。

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 すぐ向かいにポツンと一つの街灯が壁に取り付けられている。これが小路の名前の由来となったランタン。シェーンラレルンとは、美しいランタンの意味。昼はどう見ても美しいというほどではない。でも、夕方灯がともる頃には情緒たっぷりの小路になるのだろう。

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 斜め向かいのピンクの建物2階付近に銘板を見つけた。「シューマンがここに半年住んでいた」と書いてある。

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 すぐ近くの壁画も美しい。

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 また、こんなカギの看板も。「アルテ・シュミーデ」という鍛冶工房だ。

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 さらに北上すると、バグパイプを吹く男の看板が見つかる。この男はアウグスティン。17世紀のペスト大流行時期に、酔ってペストの墓穴に落ちたが、翌朝何事もなく生還して伝説の男になった。

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 そんな看板を掲げた店「グリーヒェンバイスル」のある通りは、ゴシック風な趣のある小路になっている。

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 こんな双頭の鷲の看板も。

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 そのすぐ先には、オットー・ワーグナーのモダンデザインで知られる郵便貯金局がある。

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 業務中なので、そっと少しだけ写真を撮らせてもらった。ガラスの天井に、アルミをふんだんに使ったしゃれた意匠。1912年当時の超モダン建築だ。

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 裏手から通りに出ると、すぐそこはドナウ運河だ。ドナウ川の本流はさらに2キロほど北東側を流れており、旧市街に接する運河は洪水などを制御しやすくするために造られたものだ。

 ドイツに源を発したドナウ川は、オーストリアを横断した後ハンガリー平原を蛇行しながら南下。ベオグラードやブカレスト付近を経由して黒海に注ぐ。つまり、ヨーロッパ内陸の主要国を貫いて、水運の重要航路として機能してきた。「文明の生成は異なる文化の遭遇によって触発されるものだ」(アーノルド・トインビー)との指摘の通りに、ハプスブルクの百花繚乱は、ヨーロッパのゲルマン、スラヴ、ラテンの三大文化が、ドナウを介して相互に触発され、融合された結果生み出されたものなのだろう。

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 新装オープンした船着き場からは、ブダペストやブラチスラヴァへの定期船が当たり前のように運行されていた。

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ウイーン街歩き ナーグラー小路 優雅な女性像

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 コールマルクトを歩いて行くとグラーベン通りと交差する。そこから西に延びるナーグラー小路は、路地歩き好きにはたまらない通りだ。そんな小路を歩いてみよう。

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 その前に、一度後ろを振り返ってみよう。王宮のクーポラが通りの真ん中に浮かび上がる風景は、ウイーンならではの風情が感じられる。

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 角に建つ高級スーパー「ユリウス・マインル」の入り口柱には、何とも素晴らしい女性像が6体。ウイーンには多くの建物の柱に人物像があしらわれているが、ここの群像の完成度はトップクラスだと思う。この高級スーパー、日本でいえば、東京青山の紀伊国屋といったところかも。ウイーン土産になるものも沢山売っている。

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 1体をアップしてみると、こんなに優雅な表情だ。ここのオーナーは、日本の歌手で映画女優だった田中路子さんと結婚したことでも知られている。

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 また、その隣のビルにも同様に2体の女性像があった。こちらもユリウスマインルと同じ雰囲気に仕上げており、この一帯には女性像の官能的な華やかさが漂っている。

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 この通りを歩いて行くと、左側の家並みに沢山の天使や聖母の像を見つけることが出来る。13番地には三位一体像と聖母戴冠のレリーフが、飾られている。

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 こちらは天使に背負われた地球と聖母像。

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 これは両側に天使を配した聖家族。

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 こちらも聖母と天使たちのレリーフ。

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 こんな家々を楽しみながら進むと、左に曲がる下り坂の路地を発見する。昼間だと、よく新聞売りのおじさんが声を枯らしている。

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 小路の上の空間に突き出ている鉄製看板が、味わい深いムードを醸し出している。ワイン蔵を改造したホイリゲ酒場「エステルハージーケラー」の看板だ。1683年の創業なのだろうか、1683の数字が刻まれている。

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