ウイーン 最後の夜の街歩き
ウイーン滞在最後の日、中世ウイーンの名残を求めて街に出た。
グラーベン近く、ヴォーグナー小路にある16世紀創業というエンゲル薬局の壁面には、天使像が入口両側に描かれている。
服装の色合いが上品で、広げた羽根もまた美しい。
同じ通りにはこんな看板もあった。黒い駱駝館のラクダの看板。レストランだ。
次第に夕闇が迫ってきた。空がピンクに色づいて情緒たっぷりになるこの時間帯が、たまらない。
グラーベンの通りから少し奥まって建つペーター教会はウイーンで2番目に古いという。祭壇の美しさは格別なものがある。
珍しい楕円形の天井画が印象的。聖母被昇天が描かれている。
教会から出ると、外はすっかり夜。北側のクレント小路に足を踏み入れると、グラーベンの賑わいとは打って変わって静寂が支配する。石畳、オレンジ色の街灯、高さを揃えたバロックの館が緩やかなカーブを描く。
この道を今、例えばモーツアルトの遺体を載せた黒い馬車が通り過ぎても、全く違和感がないだろうと思わせる佇まいだ。
実はこの通りにある小さなレストランで夕食にしようと思っていたのだが、予約で一杯だった。仕方なく通り一つ隔てたビアレストランに入った。
さあ、そろそろホテルに帰ろうか。
王宮のミヒャエル門をくぐった時、突然あの完璧なスタイルをしたシシーの幻が目をよぎった。よく見ると右側のドアが開いており、内部のシシー博物館の入口が見えたのだった。身長172cm、体重50kg、ウエスト50cmと、飛び切りの容姿を誇った皇妃エリザベートのシルエットが扉に描かれていた。
今回は時間がなくてエリザベート関連の史料はほとんど見ることが出来なかったが、最後の夜にお別れのあいさつに出向いてくれたシシーに感謝!
さらに、新王宮の前に差し掛かると、玄関に次々と車が到着し、着飾った人たちが、壁面に沢山の国旗を掲げた王宮に吸い込まれて行く。そう、今夜もまた、王宮で舞踏会が開かれるのだ。
こうしてウイーンの早春は軽やかに暮れてゆき、広場の片隅では、香水の残り香が束の間の華やかさを漂わせて、消えた。
| 固定リンク
| コメント (2)
| トラックバック (0)
最近のコメント