ピサ・トスカーナ

ピサ・アルノ川の昼下がり、ドゥオモ広場の夜

21pisap8263164001

 ピサの午後から夜にかけての光の変化は劇的な風景を演出してくれる。そんな変化を眺めてみよう。

P1010143


 フィレンツェから流れてくるアルノ川は、ピサを経由して地中海に注いでいる。川のほとりに散歩に出かけた。この日はほとんど風のない好天で、川面も鏡のよう。

P1010146


 近くの通りでは、地元の人たちがベンチに座って雑誌を読んでいたり談笑したりと、のどかな昼下がりだ。

17pisap1010148


 橋のアーチと建物とが川面で融合して、別の風景を描き出していた。

P1010144


 水面を眺めるだけで、面白い。

P1010140


 ソルフェリーノ橋付近では市民たちものんびりとパッセジャータ。

P8273175


 そうこうするうちに日が傾いてきた。先ほどの橋のたもとにあるスピーナ教会の鐘楼まで夕陽が落ちてきている。

P8263134


 ドゥオモ広場では斜塔がオレンジ色に装い始めていた。

P8263133


 ゆっくりと沈む夕陽によって洗礼堂の円錐形がくっきりと浮かび上がった。

P8263128


 近づくと改めてその大きさを実感する。

19pisap8263125


 ああ、夕陽が沈んで行く。

P8263135


 東側に移動して斜塔と大聖堂とを一緒に見られる場所に来た。シルエットになると、一層傾きが強調されるような気がする。

P8263165


 日が沈み切り、広場がライトアップされ始める。

3pisap1010150


 ほぼ同じアングルで見た大聖堂と洗礼堂。昼と夜では全く印象が違うことが分かる。

P8263163


 斜塔もライトアップ。ピサはフィレンツェから近いせいか、多くの観光客は日帰りでここを訪れるようだ。そのためライトアップされる頃には極端に人が少なくなる。個人的にはゆったりできてうれしいのだが、こんな美しい夜景があるのに、とんぼ返りでは本当にもったいないような気がする。

22pisap8263161001


 最後に夜のドゥオモ広場の全景をご覧頂こう。深い青と白く輝く大理石の建築群が見事に調和して、まさに「奇跡の広場」がそこにあった。

 600年以上も前に完成したこの優雅な空間を、今も体験できることに感謝!!

これからイタリアに行ってきます。それで、3週間ほどブログはお休みしますが、来月後半には新しいイタリアの風景をお届けできるかと思っています。ではまた、arrivederci !

| | コメント (6) | トラックバック (0)

意外?にも盛りだくさんの掘り出し物 カンポサント、付属博物館

P8253086


 ピサのドゥオモ広場にある建築物には共通入場券が便利だ。ドゥオモ、洗礼堂、カンポサント、ドゥオモ付属博物館などが、すべて1枚の切符(10ユーロ)で入場できる。それで、入る予定のなかったカンポサントにも入場してみた。

14pisap8253074


 外から見ると単なる平屋建ての大きすぎる長屋といった感じだったが、中は広々とした開放的な空間。

Pisap8253073


 長方形の中庭には、パレスチナのゴルゴダの丘から運んだという大量の土が敷き詰められていた。

P8253085


 回廊の各所にいろいろな彫像が飾られているが、特に目についたのが石棺の上に置かれたこの像。18~19世紀に活躍した彫刻家バルトリーニの作「ウラーニア」。ギリシャ神話に登場する文芸の女神だ。

P8253087


 こんな魅惑的な表情の女神が自分の棺の上に横たわっていては、とてもその下で安眠など出来そうにもないと思えるのだが・・・。

P8253072


 こちらは見事に白い大理石が人物をノーブルに見せている。

P8253071


 こちらも目鼻立ちのくっきりした女神?

16pisap8253084


 カンポサントは1944年7月、第二次世界大戦末期に連合軍の砲撃にあって壊滅的な被害を受けた。壁にあったほとんどの壁画が破壊されてしまったが、今も地道な修復が続けられている。

P8253080


 なかでも有名なのは「死の勝利」と題されたフレスコ画。14世紀に蔓延したペストの惨状を記録したという。緻密な描写が素晴らしい。

P8253081

 こちらは何の戦いだろうか。

P8253082


 最後の審判で地獄に落ちた人々?

P8253076


 これは説教壇の浮き彫りに似ているような。

P8253105


 今度は斜塔の奥にある付属博物館に入った。こちらには大聖堂などに飾られていた物を移して展示している。

P8253106


 ファザードに飾られていた浮き彫りだろう。

P8253107


 木彫りの聖母子像。聖母はちょっといかついお顔をしている。ロマネスク時代の作なのだろう。

P8253104


 磔刑像。非常に悲しい場面なのだが、この木彫りの素朴さがとても身近で温かい感覚を与えてくれる。

P8253109


 この聖母もふっくらとして親しみやすい。

P8253116


博物館の中庭に面した回廊からも、斜塔の姿がしっかりと見えた。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

ピサ・ロマネスクの代表建築 ピサ大聖堂

P8253100

 奇跡の広場の外観を見たら、今度は大聖堂の中に入ってみよう。まずは1063年に建設が始まり12世紀初頭に完成した大聖堂へ。この時期に発達したロマネスク建築の代表ともいえるもので、当時トスカーナ地方の聖堂建築のモデルとなっていた。

4pisap1010152


 面白いのは、使われている柱に何やら文字が入っていたこと。古代ローマ時代の石材を再利用したという。上の方の石にはADRIANO、などという文字も見えて興味深い。

7pisap8263170


 扉には新約聖書の20の物語が彫りこまれている。これはキリスト誕生かな?

P8253042


 室内は広々。68本の太い列柱がずらりと並ぶ。これらの柱の多くはパレルモ沖海戦でイスラム教徒から奪い取ったものという。

P8253057


 1595年の火災の後に再建された天井は、凹凸のあるパネルが敷き詰められた格子天井になっている。

9pisap8253046


 ジョヴァンニ・ピサーノ作の説教壇。丹念に彫りこまれた人物群像が印象的だ。

P8253051_2

パネルの仕切りにも人物像を用いて装飾性の強い造りになっている。右横のランプは、ガリレオがこれを見て振り子の等時性を発見したとして「ガリレオのランプ」などと言われたりしたが、等時性発見が1583年、ランプ制作が1587年なので、物理的におかしいとされている。

11pisap8253052


 中ほどの天井に描かれた聖母被昇天の絵が素晴らしかった。真下から見上げることを計算に入れて、本当に浮き上がって行くかのような飛翔感を感じさせてくれる。

P8253044


 中央祭壇にどんと位置する「玉座のキリスト」。とにかく巨大で、教会に入ったとたんにこのキリストと正面から相対する格好になる。ビザンチンの匂いを持つフレスコ画で、圧倒される存在感だ。また、下に細く映っているキリスト磔刑像はジャンボローニャの作品。

P8253058


 キリストの右横に控えめに立っているのは聖ヨハネ。これはチマブーエの最晩年の作とされている。

8pisap8253047


 燭台を持つ天使像はジャンボローニャ作。豪華な背景に黒い像は異色な感じ。

P8253054


 ありゃりゃ、中世オンパレードの空間に、なにやら現代風な彫刻が・・・。しかも左端の人は全然威厳なし。ユーモラスで、ほっと一息つける場所。

13pisap8253062


 隣りの洗礼堂にも入ってみた。ロマネスク建築特有の階上席があり、そこまで昇ることが出来た。上からの眺めがこれ。中央部分にある8角形がビガレッリ作の洗礼盤だ。大理石で出来ている。こうして見るとがらんとした空間になっている。

P8253060


 その中で存在感たっぷりなのが、1260年、ニコラ・ピサーノ作の説教壇。大聖堂にあった説教檀作者のジョヴァンニ・ピサーノの父親だ。息子より約半世紀前に造られたもので、こちらの方が素朴な感じがする。

 次はカンポサントに入ってみよう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ピサ 奇跡の広場 斜塔

P8263122


 フィレンツェから電車でピサを訪れた。ICで約1時間。日常の通勤時間程度であっという間にピサ駅に着いてしまう。ただ、旧市街中心地はアルノ川を越えて少し離れた場所なのでバスを利用しようと思ったが、乗り場がわからなかったので歩いてみた。それでもローマ通りを北上すると20分ちょっとでドゥオモ広場に到着してしまった。

P8253094


 広場を囲む城壁入口のサンタマリア門から、いきなり傾いた塔が目に入った。

P8253096


 そして、大聖堂の白い姿も飛び込んできた。

P8253099


 緑の芝生に覆われた広場に、手前から洗礼堂、大聖堂、鐘楼(斜塔)、カンポサント(墓所)と、4つの白い建築物が並んでいる。「奇跡の広場」と呼ばれる、イタリアでも有数の美しい広場が広がっていた。

P8253090


 ピサは13世紀後半までは海に面した海洋国家だった。十字軍遠征に参加し、商圏を拡大して莫大な富を蓄積した。ヴェネツィア、ジェノヴァ、アマルフィと肩を並べる交易都市となり、その財源を基にしてこの壮麗な建築を次々と完成させた。

12pisap8263162


 1番手前にあるのが洗礼堂。高さ35mの白大理石が映える円形の建築で、下層はピサ・ロマネスク様式と呼ばれる造形だが、14世紀になってから進められた上層部は高さを強調するゴシックの特徴もみられる。こちら側の屋根は化粧板がある。

P1010126


 でも、逆側は屋根がむき出し状態で残されていた。頂上の像は青銅製の聖ヨハネ像。

5pisap8253063


 大聖堂(ドゥオモ)はピサ・ロマネスクの代表建築だ。ファザードに太い列柱がずらりと並ぶ特徴的な造りが目を引く。

P8253041


 そして斜塔。正式には鐘楼なのだが、傾いてしまったことにで世界中でも最も有名な鐘楼となってしまった。1173年に着工し、当初は100m以上の高い塔にする予定だったが、軟弱な地盤のために着工12年後くらいから傾き始めてしまった。工事は一旦中断されたが、再開後はまたさらに傾きを増し、上層部の中心軸をずらしながら建設が続けられた。

P1010129


 なので、よく見ると途中から傾きが中央部に戻るような形になっている。

P8253110


 直径17m、高さ55m。地面と最上階とで4m近くのずれがあるという。

P1010153


 根本の部分をアップするとこんな具合の傾きだ。

P8263120


 怪しげな雲が突然湧いてきて、わずかの時間だったが不思議な光景が見られた。

1pisa


 宿泊したホテルは奇跡の広場のすぐ近くだった。屋上に昇ったら大聖堂や斜塔をこんな風に一望することが出来た。大聖堂は建物が十字に交差し、その交点に円蓋が載せられている。下から見てもわからなかった形態がここだとよくわかった。

2pisap1010128


 そして、斜塔の向こう側にはトスカーナの山々が広がっていた。清々しい気分。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

carnevale di venezia VENEZIA ベスト3 VENEZIA 教会巡り veneziaの橋 よさこい踊り アッシジ アントワープ ベルギー イスタンブール・トルコ イスタンブール・建築と歴史 イルミネーション・ヨーロッパ ウイーン ウイーン 夜景 ウイーン 小路巡り ウイーン 教会巡り ウイーン 美術 ウイーン・建築 ウルビーノ ウーディネ(UDINE・北イタリア) オランダ オルヴィエート オルヴィエートの風景 グッビオ コンクール サンマリノ シエナ シチリア エリチェ シチリア シラクーサ シチリア タオルミーナ シチリア パレルモ シチリア・トラーパニ シャンボール城ーロワール地方 スペイン・バルセロナ チヴィタ・ディ・バンニョレッジョ デルフト オランダ デン・ハーグ オランダ トリエステ トリノ ドイツ ドイツ フランクフルト ドイツ・ベルリン ドゥブロヴニク バチカン市国 パリ パリ 美術 パリ 街の風景 ピサ・トスカーナ フィレンツェ フィレンツェ 風景 フィレンツェの美術  美術館・博物館 フィレンツェの美術 教会 フランス オーヴェル・シュル・オワーズ フランス サンドニ フランス・シャルトル フランス・ジヴェルニー フランス・パリ 芸術 フランス・パリの風景 フランス・ブロワ フランス・ランス(reims) フランス・ルーアン フランス・ヴェルサイユ ブリュッセル ベルギー ブルージュ ベルギー プラハ 夕景・夜景 プラハ 建築 プラハ 教会 プラハ 眺望 プラハ 街歩き プラート・トスカーナ プロジェクションマッピング ペルージャ ミラノ モナコ モンタニャーナ(montagnana) ラヴェンナ ローマ ローマ・クリスマスシーズン ローマ・建築、歴史 ローマ・教会巡り ヴェローナ 京都 北イタリア 南イタリア 夕景・夜景 大阪 教会 旅行・地域 日本の祭り 日本の花々 日本の風景 映画・テレビ 書籍・雑誌 有名人の滞在した場所 祭り 経済・政治・国際 美術展 venezia 広場 VENEZIAの風景