教皇たちの墓碑とスタンダールが絶賛した像ーサン・ピエトロ大聖堂④
サン・ピエトロ大聖堂は、至る所に彫刻が配置されているが、その多くは教皇や著名人の墓碑になっている。つまり、教会はお墓だらけ。絵画作品はほとんどヴァチカン美術館に移されたが、彫刻類は本物。だから、この大聖堂内での美術鑑賞は彫刻に集中すればよい。もちろん、その代表はミケランジェロのピエタになるが、他にも見事な作品が並ぶ。
これはアレクサンデル7世の墓碑。バロック墓碑彫刻の傑作と称される、ベルニーニの作品だ。手を合わせる教皇の下に慈愛、正義、賢明を象徴する4人の像が配置されている。オレンジの衣の広がりがいかにもベルニーニらしい。
イノケンティウス12世。17世紀最後の教皇で、衰退しつつあるカトリックの権威の回復に尽力した。右の秤を持つ女神の格好が珍しい。
グレゴリウス13世。左手を挙げた教皇は、グレゴリオ暦、つまり現在の太陽暦を採用した人だ。
ピウス8世。相当に高い位置に設置されている。
この教皇はだれなのか、調べがつかなかった。
こうした教皇たちの墓碑オンパレードの中にあって全く異質の墓碑を見つけた。それは、入口近く、向かって左側身廊部分にあった。
スチュワート家の墓碑は、縦長の大きな大理石彫刻。墓の扉の両側に裸の天使が向き合う。
上部には亡くなったスチュワート家の人々の胸像。名誉革命で王位を失ったスチュワート家のジェームス3世はローマに亡命していた。2人の息子には子供がいなかったため、スチュワート家はそこで途絶えてしまった。
あの「赤と黒」の作家スタンダールは、1817年に大聖堂を訪れた際、この墓碑に釘付けになったという。
「この天使像の美しさを描写することは、僕には不可能である。それと向かい合うベンチに座って、僕のローマ滞在の最も甘美な時間を過ごしたのだった」と、最大限の賛辞を贈っている。アントニオ・カノーヴァの作品だ。
私もスタンダールのようにベンチに座って甘美な時間を過ごそうと思ったが、今はベンチはなく、向かいにはクレメンティーナ・ソビエスキ像が配置されていた。
中ほどにある神秘の礼拝堂では、厳かにミサが行われていた。
また、バルダッキーノの柱に接する形で聖母子像が置かれていた。以前来た時にはこのような像はなかったと記憶している。クリスマス時期の特別の像なのかもしれない。
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