ルーアン 美術館とモネ
ルーアンの紹介も今回が最終回。これまでにも何度か触れてきたが、この街とモネとは深い関係にあり、そこを避けてはこのシリーズを終わるわけにはいかないだろう。1892年から93年にかけてモネはルーアン大聖堂を描き続けた。大聖堂前の旧税務署の2階を借りて、朝、昼、夕と刻々と移り行く大聖堂ファザードの模様を30数枚の作品に残している。
モネの凄い所は、同じ建物の同じ角度から見た同じ壁面を、光の変化だけで描き分けようと試み、見事にこれを成功したことだ。まさに光の印象をキャンバスに刻む印象派の代表的人物としての面目躍如といったところだ。
現在ルーアンに残されているのは、その内の1点。曇りの時のファザードだ。
ただ、借りていた2階はブティックの下着売り場試着室近く。そこにむつくけき髭のおじさんが四六時中じっと何かをしているのだから、ご婦人たちが不審に思うのも無理はない。ついに苦情が出て、最後はこの建物の南隣の建物に移らざるを得なくなったという(その建物は今は残っていない)。
その、モネの作品が展示されているというルーアン美術館に入った。モネを始めとした印象派の画家たちの作品が多数収蔵されており、パリ以外では国内最大の印象派コレクションを誇っている。
これは「サンドニ通り 1878年6月30日の祝日」。はためくフランス国旗が通りを埋め尽くして、祝祭の華やかな雰囲気がうかがわれる。この祝日とは、普仏戦争のダメージを乗り越えて開催したパリ万博の開幕に伴う熱気を描いた作品だ。似た構図のオルセー美術館にある作品は「モントルグイユ街」となっている。
多かったのはシスレーの作品。生涯を通じてパリ周辺の風景画を描き続けた画家だ。
マチスが「もっとも典型的な印象派の画家はだれか?」と、ピサロに問いかけたところ、ピサロは「シスレーだ」と答えたという。
これはルーブルの遠景だろうか。
カイユボットの「カフェにて」もあった。
印象派ではないが、超有名な画家の絵もあった。カラヴァッジョの「キリストの鞭打ち」。強烈なコントラストを使った劇的な表現を得意としたバロックの代表的な画家の作品だ。以前ローマでカラヴァッジョ作品を巡る旅をして10以上の教会を巡ったことがあった。
おお、ロウソクの光によって幻想の世界に誘い込む画家・ラトゥールの作品も。と思ったが、この「イレーヌに手当てを受けるサン・セバスチャン」の原作は失われており、残る8枚のコピーのうちでこの絵が最も優れたものだという。
ジャンヌ・ダルクの部屋と名付けられた場所があり、ジャンヌ・ダルクを描いた絵が何点か。この絵が、とても優しいジャンヌの表情を捉えていた。
1階に外光の差し込むゆったりとした空間があった。ここは彫刻が置かれたレストランになっていた。
全く込み合うこともなく、しばし時間を忘れて芸術的空間に浸れる場所だった。
次回は、モネがその人生の後半を過ごしたジヴェルニーに行こう!
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