モンタニャーナ(montagnana)

モンタニャーナの夜景ファンタジア

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 生ハムの簡素だけど実は美味しい夕食を終えて、夜の散歩に出かけた。ホテルのオーナーから教会や城壁のライトアップがあると聞いたからだ。

 広場に出ると、もう教会のライトアップは始まっていた。昼に見た時よりドゥオモは大きな姿になっているように見える。

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 広場周囲の通りは屋根付きなので雨でも苦にならない。

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 正面の建物の屋根にある煙突は、ちょっと変わった形をしていた。これもいにしえの職人たちの意気込みの表れかも。

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 まるでどこかの宮殿のよう。昔はパラッツォの一部だったのかもしれないが、今ではここも単なる広場前の通路。

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 本来ならレストランやカフェの屋外スペースとなる場所だけど、今夜は雨のせいもあって御休み。

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 そうこうしているうちに黄昏の空の青さがとても美しくなってきた。町の中心広場は、時折車が通り過ぎるだけで人通りはほとんどない。人口は1万人足らずということだが、それでもこんなに立派な教会を持っていることに驚きを感じてしまう。

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 城壁のライトアップは午後8時からというので、8時きっかりに城壁の外に移動した。しっかりライトアップが始まっていた。

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 14世紀に造られた城壁は、不規則な四辺形で一周約2キロ。高さ18mの塔が24か所に設置されている。ぐるりと眺めてみると、ライトアップされているのは駅に向かう南側城壁の東半分だけで、反対側は真っ暗状態だった。

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 でも、ライトアップ部分は幻想的な光景を見せていた。雨雲の移動によって空の模様が刻一刻と変化する様は、映画の一場面みたい。特に白い雲で空の大半が覆われた時などは、風雲急を告げる中世の戦い直前の緊張を思わせる。またある友人は、この写真を見て「ハリー・ポッターの世界のようだ」と言っていた。

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 フェラーラ領主のエステ家、パドヴァ領主のエッツェリーノ家などの支配の後15世紀からはヴェネツィア共和国の領地となった町。東方貿易で運ばれた織物などの物資がこの地で保管されていた時代もあったという。

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 こうして静かに広場の夜景を見ていると、雨もまたよし、と思えてきた。

 ただ、30分でいいから晴れた夕焼けの城壁も見たかったなあ。

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 翌朝目覚めると、今度はすごい霧。ドゥオモ広場では市の立つ日ということで露店の準備が始まっていたが、天気はこんな有り様。

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 それでも、靴屋さんの露店ではすっかり準備が出来ていた。露店でも陳列の仕方にはセンスが感じられる。やっぱりイタリアだ。

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 オーナーが駅まで車で送ってやると言ってくれたが、風景を眺めながら歩きたいので、気持ちだけ有難く受け取ってチェックアウト。駅に向かった。

 駅は無人駅で、切符の自動販売機も見当たらない。というより、駅舎そのものが閉鎖されていて入れない。横にあるキオスクで聞いてみると、そこで切符を売ってくれるという。それで「ウーディネまで」と頼んだら、キオスクのお嬢さん、「そんな駅の切符は売ったことがないのでわからない」という。さあ、困った。「北の方に行くんだけど、じゃあ、どこまでならわかる?」と聞くと、「ヴェネツィアならOK」だって。どうせヴェネツィアで乗り換えなくてはならないので「じゃあ、ヴェネツィアまで」と購入。お嬢さん、ほっとした表情だった。

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 ホームには線路が2本。ヴェネツィア方面への電車がどちらのホームから発車するかわからない。1人だけいた地元の人に聞いてみると、答えは「センプレ ウノ」だって。つまりすべて1番線、上りも下りも使うのは1番線だけなのだそうだ。その通り電車は1番線に入ってきた。さあ、次の目的地アルプス・ドロミテの麓にあるウーディネに向けて出発だ。
  

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どこか知らない世界へ  モンタニャーナの城壁

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 暑い夏の思い出として、クロアチア・ドゥブロヴニクの風景を特集しましたが、また、イタリアの旅に戻ります。

 

 「どこか知らない世界へ」ーーグッビオ、チヴィタと歩いてきた今回の旅のキーワードは、このフレーズだった。そして、もう一つの「知らない世界」が、モンタニャーナ。実は、数年前にインターネットでたまたま目に止まった一枚の写真があった。高い城壁が張り巡らされ、その何か所に尖塔が配置されている。壁の内部はうかがい知れない。ただ、その孤高のたたずまいに魅せられてしまった。それが、モンタニャーナという町。ガイドブックにも何も載っておらず、予備知識はゼロ。でも、その名前はイタリア鉄道のウエブにはちゃんと載っていた。パドヴァとマントーヴァの間の無人駅。

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 単線のローカル線でパドヴァから約1時間、モンタニャーナ駅に着いた。降りたのは私を含めてたった3人だけ。町への道を聞こうとして駅舎横の通路を出ると、真っ直ぐ前に城壁が現れた。

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 迷うことはない。真っ直ぐ進めばOKだ。

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 空は今にも泣きだしそう。写真で見た遥かな青空は全く見えない。

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 城壁の中に入る。

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 中心の通りはポルティコ(アーケード)が続く。でも、天気のせいか、午後だからか、人通りはほとんどない。

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 やっと一軒のホテルを見つけてチェックインした。他にはホテルらしきビルは見当たらなかった。でも、ここのホテルはとても立派。気さくなオーナーが分厚い資料をくれて、街の歴史を教えてくれた。その教えに従って、ドゥオモに向かった。

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 城壁内唯一?の広場に面した堂々としたドゥオモ。もらった資料によれば、扉口はサンソヴィーノ作。簡潔にすっくと高くそびえるファザードだ。15世紀前半、ゴシックの影響下に建設が始まり、16世紀初頭、ルネサンス期に完成したという。

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 中央、主祭壇に大きな絵が据えられている。

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 近づいてみてビックリ。これはすごいじゃん。早速資料をめくる。ああ、ヴェロネーゼ作「キリストの変容」。キリストが弟子を率いて山に登った時、彼の体が輝きだした。そして天から「これは我が子(神の子)なり」と告げられたという、聖書の物語だ。

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 また、入口側の壁に描かれた絵も妙に気になった。これも解説がみつかった。「ゴリアテの首を持つダビデ」。だいぶ退色していたが、完成当時はさぞかし華やかな色彩だったろうと思わせる。解説には「この卓越した作品はジョルジョーネと仮定されている」との記述だった。確定はしていないものの、ジョルジョーネかもね!といった感じ。あのティツィアーノの師匠で眠れる裸婦像を描いた天才だ。

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 この他人物像が連なる礼拝堂もあった。

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 こちらは主祭壇天井部の聖母被昇天。ブオンコンシリオの作品のようだ。

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 これも素朴な中に敬虔な気持ちにさせる崇高さを持ち合わせた絵画に見えた。

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 見知らぬ町の見知らぬ教会で、ヴェロネーゼに会える幸せ。ジョルジョーネかもしれない絵がポンと置いてある驚き。イタリアの教会巡りはこれだからやめられない。

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 ドゥオモ横の建物も由緒ありげなアーチ型をしていた。

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 そのアーチの中にはこんなフレスコ画がさりげなく。

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 アーチそのものの模様も、植物をモチーフにしたきめ細かな細工がなされている。モンタニャーナ恐るべし。

 ホテルにレストランがあったので、そこで夕食をと思ったが、あいにく今日は休みだって。町に出てもそれらしい店が見つからず、細い道に入ってみたらスーパーを見つけた。そう言えば、もらった資料には生ハムがここの名産だって書いてあった。店に入ってみると、ラッキーなことに今日は生ハムの特売だってビラが貼ってあった。店内にちゃんと肉屋さんが入っていて、大きな生ハムの塊から切り分けてくれた。それにポテトサラダ、牛乳を買ってホテルに。

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 皿もなくて見てくれは悪いが、この生ハムがめちゃくちゃうまかった。極限まで塩分を抑えてあるため日持ちせず、遠い所には出荷できないことから一部には幻の生ハムとさえいわれているんだ、とオーナーが自慢げに教えてくれた。その味は甘ささえ感じるほどの柔らかく深い味わいで、今回の旅で食べた食材の中でもNO1だった。

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 夕食後町に出ると、ドゥオモのライトアップが始まった。その模様は次回に。

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