VENEZIA 教会巡り

もう1つの「最後の晩餐」サント・ステファノ教会、マッジョーレ教会ーヴェネツィアにティントレットを訪ねて⑤

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 アカデミア橋の手前にある大きな教会がサント・ステファノ教会だ。15世紀のヴェネツィアンゴシック様式の建築。入って奥右側の別室に、ティントレットが円熟期に描いた3枚の絵に出会える。「最後の晩餐」は、マッジョーレ教会のものより保存状態がよく、色彩も鮮やかに残されている。

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 入口の壁に掲げられている大きな2枚の絵は「弟子の足を洗うキリスト」「ゲッセマイネの祈り」。いづれも躍動する人たちの姿が活写されていて、彼の面目躍如といったところだ。

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 その部屋のさらに奥にあったレリーフ。超二枚目の人は一体だれ?

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 こちらは、老人の前でひざまずく女性。まるで懺悔でもしているよう。

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 同教会の先にあるピザーニ館の庭に不思議な顔が展示されていた。多分これは、ヴェネツィアヴィエンナーレの展示物のようだ。

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 大運河を渡る唯一の木造橋・アカデミア橋を渡り切ると、アカデミア美術館が目の前だ。

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 ここで、マッジョーレ教会に戻る。前回は絵画作品を紹介したが、この教会にはまだお見せしたいものが残っていた。まずは、すっきりと直線の柱が小気味よい主祭壇。軽快な構成を得意とする作者パラーディオの会心作だ。

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 祭壇の中心には球体があり、そこに聖人が立つ。

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 教会中央付近の空間に机が置かれ、レンズを組み込んだスワロフスキーのクリスタルガラスが展示されていた。これも、ヴィエンナーレ作品。

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 そのガラスに背景の祭壇上部が映り込んで、新旧のコラボ状態。

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 実際の祭壇上部はこんな具合。不思議空間が演出されていた。

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 主祭壇後方の聖歌隊席も、ここは豪華。48の素晴らしい木彫の椅子が並ぶ。

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 それぞれに木彫りの像が添えられる。ベネディクトの生涯の物語がテーマだという。

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 中に、涙を浮かべた天使像もあった。どんな意味が込められているのだろう。

 この他ティントレット作品はドゥカーレ宮殿の「天国」を始め、サルーテの祭りで紹介したサルーテ教会、サン・ザッカリア教会など至る所で見ることが出来る。もちろんアカデミア美術館を忘れてはいけない。ティントレット好きの方はどうぞ、たっぷりとヴェネツィア探訪を楽しんでください。

 なお、私は少し旅に出ますので、半月ほどブログをお休みします。来月にはまた、新しい風景をお届けしたいと思っています。





























 








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聖書の劇場化。マッジョーレ教会ーヴェネツィアにティントレットを訪ねて④

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 サンマルコ広場の対岸に浮かぶサンタ・マリア・マッジョーレ教会は、ルネッサンス末期の天才建築家アンドレア・パラーディオの代表作でもある。

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 その姿の美しさから「水辺の貴婦人」とも呼ばれる。軽やかで手前の広場の街灯ともよくマッチし、朝方などは立ち止まって見入ってしまう。

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 もっとも印象的だったのは、ある満月の夕、絶妙なバランスの鐘楼とファザードとが月光に照らされて青白く浮かび上がっていたシーン。

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 ここもティントレット作品の宝庫だ。「最後の晩餐」は、ヴェネツィアの中にも何か所か彼の作品が残されているが、最後に完成したここの作品が最も劇的で迫力を感じさせる。まるで宴会のような賑やかさ、画面を斜めに切り取った構図は、斬新さに溢れている。

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 有名なダヴィンチの「最後の晩餐」の緊張感に満ちた雰囲気とは別次元だ。左上に灯された灯りによって、右上にいる天使たちの輪郭が浮き出て、隅から隅まで躍動感にあふれた作品になっている。まるでスペクタクル劇のハイライトシーンを見るようだ。

 ただ、この絵はかなり高い場所に掲げてあり、ちょうど窓から差し込む光が真っ正面に絵を光らすので、写真に撮るのが相当難しかった。

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 その反対側の壁にあるのが「マナの収拾」。神から授かる白いマナ(食料)をユダヤ人たちが喜んで拾い集める情景が描かれている。当時ティントレットは70歳。でも全く衰えを感じさせない。

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 こちらは「聖ステファノ」。聖ステファノはキリスト教最初の殉教者。キリスト教がまだ十分に浸透していなかった時、邪教の人として、彼は都の外に引き出され、石打ちの刑にされた。だが、ステファノは自分を殺す者たちへの許しを神に祈りながら死んでいったという。

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 石にまみれながら祈る聖ステファノ。

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 その姿を見守る神。その様子をカラフルな色彩で描き切った。

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 これは「聖母戴冠」だろうか。多くの人々の中心で輝く聖母マリア。

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 光の冠がかぶせられようとしている。

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 入口近くにあるヤコボ・バッサーノ作「羊飼いの礼拝」。前回、華やかとも言えるティントレットの同名の作品を紹介したが、こちらは静謐な空間に聖母子を配置している。まるで日本画の掛け軸を思わせる縦長の構図で,上辺に天使たち,下辺に生まれたばかりのキリストとマリア、中辺は闇を配置している。

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 赤子のキリストを見つめるマリアのまなざしの優しさ!バッサーノは夜景画の名手でもあった。

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 セバスティアーノ・リッチの「玉座の聖母と諸聖人」。ヴェロネーゼ風の豊かな色彩が特徴だ。
































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ティントレットだらけの聖ロクス同信会館ーヴェネツィアにティントレットを訪ねて③

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 聖ロクス同信会館は教会ではないが、1477年にペストが流行した時、病人看護を目的に設立された施設だ。聖ロクスはペスト患者の守護聖人。建物は1549年に完成するが、内部の絵は1564年ごろから3期に分けて制作が続けられ、1587年に最終的に完成した。その中心となったのがティントレット。20年以上にわたって、まさにライフワークとして取り組んだ所だ。

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 2階に繫がる階段を上って行くと、まず正面と天井の絵が見えてくる。

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 大階段右横に広がる絵は「ペスト追放を聖母マリアに祈る聖ロクス」(アントニオ・ザンキ作)。同信会の精神を表わしたものだ。

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 階段を昇り切るとティントレットの絵画が渦巻くように展開する大広間に出る。

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 壁面は聖書から題材を撮った23枚の大絵画で埋め尽くされている。

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 最奥にあるのが、「羊飼いの洗礼」。彼の代表作の1つだ。イエス誕生の夜ベツレヘム郊外の貧しい羊飼いの所に大天使が舞い降り、救世主の誕生を告げるというエピソードに基づいたテーマ。上段右側に若々しい聖母がおり、その傍らに生まれたばかりのイエスが光を放っている。みすぼらしい家の内部だけに、余計にキリストの輝きが効果を生んでいる。

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 こちらは「嬰児虐殺」。この頃生まれた子がやがて王を滅ぼすという予言を聞いた時の王が、嬰児の皆殺しを命令するエピソードだ。

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 さらに「青銅の蛇」。これも旧約聖書で、モーゼの庶民救済の話から取ったもの。いずれも強い明暗の対比によって劇的な効果を造り出すティントレット特有の絵画群だ。広い空間を圧倒的に支配し、息もつけないくらいの迫力が漂っていた。

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 また、ここにはティツィアーノの「受胎告知」がある。ティントレットと違って柔らかな雰囲気の絵になっていて、ホッと一息つける感じだった。

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 大きな絵画群の合間合間に珍しい木製の像が並んでいる。

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 これらは1657年から64年にかけてフランチャスコ・ピアンタが制作したもの。

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 いずれも擬人像。

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 美徳、悪徳、学問、芸術などを象徴するという。

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 中には「スパイ」などという名がつけられたものもある。

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 たった1つ、タイトルと像が一致したのがこの像。目隠しされた姿は「憤怒」を象徴しているのだという。

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 同信会館の隣りにある聖ロクス教会には、入口に十字架のキリストがあった。

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 この教会で目立ったのはジョヴァンニ・アントニア・フミアーニのこの絵だった。




































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ティントレットの家で陽気な作業員と会うーヴェネツィアにティントレットを訪ねて②

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 デロルト教会から道路1本と橋1つを隔てた場所、モーリ通り3399番地に向かった。そこにはティントレットが20数年間暮らした家があるはずだ。

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 運河沿いを歩いて行くと、朝降った雨がへこんだ石畳に残って、建物の姿を映していた。

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 と、手前に何やら不思議な石造の立つ細長い広場に出た。モーリ広場だ。

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 この男はシオール・アントニオ・リオバ。ギリシャから移り住んだ商人で、おそらく第4回十字軍に参加してコンスタンティノープル陥落戦を戦った人物だ。

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 石造はまだある。

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 サンディとアファーニ。リオバと合わせて3人のマステッリ家の兄弟だ。

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 彼らが手広く交易の商売をしていた拠点がこのマステッリ館。

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 広場を過ぎても、もう一人石像があった。この像の隣りがティントレットの家。

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 しかし、ちょうど改築工事中で、覆いがかけられていた。「ここがティントレットの家ですよね」と聞くと、「そうだよ。寄って行きなよ」と、現場監督らしき作業員。自分の家でもないのに、気軽に案内してくれた。
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 でも、ポルティゴを通り抜けて出たところからは、工事中なので近づけない。それで外観をちら見することしかできなかった。

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 玄関上のプレートも半分以上隠れた状態。ここには「あまたの絵画を世に送り出したティントレットがかつて住んだ家」と書かれているはず。

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 「工事が終わったら、またおいでよ」。陽気なおじさんたちの声に送られてティントレットの家を後にした。でも、「またおいでよ」って言ったって、日本から来るとなると大変なんだけどね。

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 真っ青に晴れ上がっていたいた空を、うろこ雲が覆い始めた。明日も晴れてくれればいいんだけど・・・。






























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マドンナ・デロルト教会の「聖母マリア」-ヴェネツィアにティントレットを訪ねて①

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 今回から、またヴェネツィアに戻って、ティントレットにゆかりのある教会巡りを何回か連載します。

 本島の北側、カンナレージョ地区まで行くと、あふれるほどの観光客もほとんど目立たなくなる。その一角に、珍しい石畳の広場を持つマドンナ・デロルト教会がある。

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 小規模ながらゴシック様式で建てられた教会は、1399年から1473年にかけてレンガとクロアチア石で修復された。

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 正面ファザードの左右に12使徒の彫像が立っている。

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 作者は不明だが、ヴェネツィア独特の様式を生み出している。

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 入口上には中央に聖クリストフの像。何をしているのか、ユーモラスな格好だ。

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 右には聖母マリア。こちらは理知的な表情。

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 左は大天使ガブリエル。となると、受胎告知を表現しているのかも。これらはバルトロメオ・ボンの作品。

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 そしててっぺんにも像が置かれている。絶好の天気で、空が吸い込まれそうに青かった。

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 14世紀中ごろの完成期には聖クリストフの教会だった。しかし、教会近くの菜園(オルト)に置かれていた聖母子像(ジョヴァンニ・デ・サンティ作)が、霊験あらたかであるとして、多くの巡礼者が訪れたことから、この聖母像が教会内に祀られ、「菜園の聖母の教会」(マドンナ・デロルト)と改名したという。

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 内部の見どころはティントレットの作品だ。右側壁に掲げられた「聖母マリアの奉献」は、幼子マリアが母に連れられて教会を訪れるシーンが描かれているが、夕焼けの空に向かって階段を上るマリア母子の姿がドラマチックなタッチで描かれている。いつまでも見ていたい気持ちにさせる絵だ。

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 また、主祭壇右側には「最後の審判」がある。ティントレットはドゥカーレ宮殿にも同じテーマの大絵画を残しているが、個人的にはここの絵の方が素晴らしい出来栄えになっていると思う。

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 その右隣の礼拝堂は霊廟になっている。よく見るとこの墓はまさにティントレットの墓だ。ティントレットは1518年生まれ。劇的な構図、色遣いで描かれる絵画は、強いコントラストと共にドラマチックな作品として印象づけられる。1594年ペストでこの世を去り、ここに埋葬された。本名はヤコボ・ロブスティ。父の職業が染物師(ティントーレ)だったことから、それが彼の通称になってしまった。ヴィンチ村生まれだからレオナルド・ダヴィンチとか、ヴェローナ出身のヴェロネーゼなど、結構通称が有名な芸術家は多い。

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 入口左端に、こんな礼拝堂もあった。ベルニーニの絵の写真だけが飾ってある。脇に添えられた但し書によると、この絵は盗難に遭っていまだに行方不明だとのことだ。何ともまあ・・・。

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とにかく、充実した教会空間であることは間違いない。


























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サルーテ教会に沈む夕陽

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 サルーテ教会は、その姿の美しさでヴェネツィアの風景に欠かせない存在となっている。今回は天候にも恵まれて、夕焼けの光景にも出会うことが出来たので、そんな風景をご覧頂こう。

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 定番はアカデミア橋からの眺め。観光写真でもよくこの角度からのものが使われる。

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 こちらは少しスキアヴォーニ河岸を歩いてアルセナール付近から。 ドームを含めて4つの塔がそびえていることがわかる。

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  サンマルコ小広場からは手前にゴンドラを入れた写真が容易に撮れる。近くにゴンドラ乗り場があるためだ。

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 サンマルコ広場の鐘楼に上れば、サルーテ教会を見下ろす角度で眺められる。

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 ドームの頂上にはこんな像が立っている。

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 同教会の後方にはレデントーレ教会が あり、手前には税関の岬が続く。その姿を一枚の写真に収められるのは、鐘楼からしかない。

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 しばらくして、再びサンマルコ小広場に出かけてみると、日が傾いてきて教会側の正面から光が差してきた。

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 税関の女神の像を含めた横並び シルエット群

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 空が本当にオレンジ一色に変わってきた。

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 思えば、初めてヴェネツィアに来た時に、この夕焼けの光景が 突然目に飛び込んできた。そのサプライズに、声も出ないほどの感動が胸に押し寄せてきたことを、今でも鮮明に覚えている。

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 こうして側面をアップすると、聖人たちがじっと夕陽を見つめているかのような錯覚に陥る。

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 そして次第に日は教会のかなたに沈んで行く。

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 今日も一日無事に終わろうとしている。空の美しさを届けてくれた自然に感謝の気持ちを捧げたくなるのもこの時間帯だ。

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美術館を凌ぐ絵画群ーサルーテの祭り下

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 またヴェネツィアのサルーテの祭りに戻ります。

 広い堂内には6つの礼拝堂があるが、それぞれに縦長の絵画がはめ込まれて教会の華麗な空間を形成している。 主祭壇に向かって左横礼拝堂には、ヴェネツィア絵画の王と称されたティツィアーノの「キリスト降天」。神を象徴するハトの放つ光が地上の人々に伝わって行く様が描かれる。

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 一方、右側にはルカ・ジョルダーノの「聖母被昇天」。聖母マリアが天使たちに担がれて天に昇って行く。

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 その絵の前に手を合わせて立つ老人像はジローラモ・ミアーニの作。白く清々しい立像だ。

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 また、少女が祈りながら階段を上って行くほほえましいシーンが描かれた絵も。この絵もジョルダーノ作の「聖母の神殿奉献」。

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 聖母がテーマだけにミサの最中何度もこの絵の場面がモニターに映し出されていた。

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 もう1つ。これも美しい絵画があった。作者は不明。

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 こんな空間は美術館並みの質の高さだ。

 祈りが一段落すると、順に主祭壇の右横を通って裏側の聖歌隊席に回り込む。一方通行にして人の流れをスムーズにするための措置だ。このため、普段は入れない場所にも行くことが出来た。

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 祭壇の裏にあったイコン。こんなものがあるとは知らなかった。

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 列に従って進んで行くと、聖具室に着く。この部屋の正面にはティントレットの大作「 カナの婚礼」が飾られていた。イエスが施した最初の奇跡の光景だ。にぎやかで華やかな婚礼の風景の中央部分に光が差し込み、周囲を暗くしたドラマチックな構成がいかにもティントレットらしい。

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 聖具室を出て横の出口から教会の外に。 反対側、奥の道が露店が立ち並ぶ通りになっていた。

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 風船が一杯。

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 一見焼き鳥みたいな形をしているが、これはキャンデー。

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 子供たちにとってはこんな楽しみが待っている。

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 人の流れに沿って移動して行くとジュデッカ運河に面したザッテレの海岸に出て行く。

 派手なイベントは何もないが、ほっこりとした心温まる祭りの雰囲気を味わえた一日だった。

 

 

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聖母マリアがペストからヴェネツィアを救ったーサルーテの祭り中

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 教会の中に入ると、正面に聖母マリアを中央に配した主祭壇が目に飛び込む。

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 市民たちがそろって祈りを捧げている。

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 入口付近には大きなロウソク台が置かれ、みんなここにロウソクを立てて祭壇に向かう。

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  壁にはテレビモニターが設置されており、混雑していても内部の様子がわかるように配慮されていた。

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 司祭によるミサの説教が堂内に響き渡って厳粛な雰囲気に満たされて行く 。

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 この教会建設の背景には悲しい歴史が横たわっている。1630年、ヴェネツィアの街を襲った病・ペストの流行は、一説には5万人近い犠牲者を出すという大惨事となった。

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 衰退期に入っていたヴェネツィア共和国に追い打ちをかける悲劇だった。そのペストの流行がようやく終わったことを記念して、1631年に聖母マリアに感謝するために造られたのがこの教会だった。

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 従って中央祭壇には象徴的な像が置かれている。中央上部に立つのが聖母マリア。向かって右側の老婆がペストを表わし、左側の女性像はヴェネツィアの擬人像となっている。

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 聖母がペストを追い出し、ヴェネツィアが聖母に感謝を捧げるという構図が鮮やかに表現されている。フランドルの彫刻家ジュスト・クールの最高傑作だ。

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 群像の下にあるイコン「健康の聖母」は13世紀のもので、ヴェネツィア軍がオスマントルコとの戦いで勝利した際、 108代ドージェ(総督)フランチェスコ。モロミーニ がクレタ島(ギリシャ)から持ち帰ったものだ。

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 そのイコンもモニターでアップされていた。

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 主祭壇での説教は約1時間で一区切り。さらに別の司祭が交代して、この日1日中続けられる。

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 最も重要な1時間のミサが終わった時、前に立っていた若い女性が突然振り向いて手を差し伸べるではないか。一瞬何かの間違いかと思ったが、これはミサの終わりに 隣人たちと握手を交わして健康を祝うという恒例の行為と気付いた。彼女だけでなく周囲のみんなと握手し合って和やかにミサを終えた。少しの間ヴェネツィア市民になれたようなうれしい気分に浸った時間だった。

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仮橋を渡って教会へーサルーテの祭り上

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 今回ヴェネツィアに来た目的の一つは サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会の祭りを見るためだった。この祭りはペストの終焉を感謝し健康と平和を祈る祭りで、毎年11月21日に行われる。有名なカーニヴァルのような華やかさは全く なく、市民のための静かな祭りだ。

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 サルーテ教会は17世紀、当時まだ34歳だった建築家バルダッサーレ・ロンゲーナがコンペで選ばれて建設したもの。ローマで隆盛を極めたバロック様式をヴェネツィアに持ち込んだ。サンタルチア駅からヴァポレットでカナルグランデ(大運河)を進んで行くと、ちょうどアカデミア橋をくぐった所で、まるで海に浮かんでいるかのような雄姿が正面に見えてくる。「ああ、ヴェネツィアにきたなあ・・」と実感する瞬間だ。そういえばキャサリン・ヘップバーン主演の「旅情」でもそんな場面があったっけ。

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 サンマルコ側から教会に行くには、船に乗るかアカデミア橋まで遠回りするしかないが、年に1回だけ特別の橋が架けられる。それが、この祭りの数日前だ。

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 当日ヴァポレットのジーリオ船着場に行くと、仮橋が出来ていた。注意書きを見ると、「19日14時から25日22時まで 通れる」と書いてあった。わずか1週間だけの特別な橋というわけだ。

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 下が船のようになっており、これを土台にして橋げたをいくつもつなぎ合わせた構造。まさに浮き橋になっている。

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 大勢で歩くと橋が揺れる。

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 橋を渡って教会前広場に行くと、長いロウソクの売り場が設けられていた。ここでロウソクを買って教会に 。

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 長いのは1m以上もある特大サイズ。多くは30cm程度のものを買っていた。

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 教会正面の入口には 飾りの垂れ幕が下がり、特別の日だとわかる。

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 その正面からは対岸のサンマルコの鐘楼がきれいに見える。

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 正面の階段からは大勢の市民がお参りのために昇ってくる。入口に着いた時係員が祭壇に繋がる中央部分の人垣を整理して通路を作っていた。ああ、ここからVIPたちが 入ってくるというわけだ。ならば、この通路端でスタンバイすれば、行列の入場が見られるはず。

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 ちょうど午前10時ころ、税関の岬方面から白い装束の人たちが行進してきた。

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 そしてすぐ目の前を通って教会に入って行く。

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 白い服装の基本は変わらないが、その上に羽織るものが微妙に違う。位の違いを表わしているのかも。

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 最後に大司教と思われる立派な装束の人が入ってきた。

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 いよいよメインのミサが始まるようだ。

 

 

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サンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ教会

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 フランチェスコ教会の西方、バポレットのオスペダーレ停留所近くにあるのが、このパオロ教会だ。ヨハネ(ジョヴァンニ)とパオロという二人の聖人名をまとめて名付けられた欲張りな教会は、名前にふさわしく壮大な建物と内容を持っている。

 内部に入る前に広場の騎馬像に注目だ。これはバルトロメオ・コッレオーニの像。ヴェロッキオの作品だ。ベルガモ出身の傭兵隊長だったコッレオーニは、「サンマルコ」に像を建立するという条件で資金を提供したのだが、ヴェネツィア政府は個人の像を都市の政治的、精神的中心地である「サンマルコ広場」に置くつもりは全くなく、「スクオーラ・グランデ・サンマルコ」(サンマルコ同信会館)のあるこの広場に像を設置したという。ヴェネツィア人はこのエピソードがとても好きなのだとそうだ。

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 その同信会館が写真後方の建物で、教会と隣接しており、今は市民病院になっている。病院という意味のイタリア語が「オスペダーレ」で、その名称が最寄の停留所名になっているというわけだ。カーニバルのときは、サンマルコ広場周辺だけでなくこの広場にも仮面の人たちが出没していた。

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 教会内部でも、個人的なお気に入りは左翼廊の奥にあるロザリオ礼拝堂。ヴェロネーゼの絵画が天井を彩っている。この絵は「聖母被昇天」。仰視法を使い、聖母マリアが天に昇ってゆく姿を華やかな色調で描いている。じっと見上げているだけで心の中に高揚感が湧き上がり、幸せな気分にさせてくれる絵画だ。

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 こちらは壁に掛けてある「キリスト誕生」。手前下側の聖家族に光のスポットを当てて後方を闇に霞ませた劇的な手法が、いかにもヴェロネーゼらしく、これもまた印象的な絵画だ。

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 ヴェロネーゼ以外にも著名な絵画が何枚もある。ジョヴァンニ・ベリーニの「聖ヴィンツァンツァ・フェッレリ」もその中の一枚だ。大きな祭壇画で、一枚の板に9枚の絵が描き分けられており、中央の人が癒しの聖者といわれたタイトルの人物だ。

 横幅85m、奥行き32mという、ヴェネツィアではフラーリ教会と並び、サンマルコ大聖堂をしのぐほどの大きさを誇るこの教会には、海洋国家の反映を支えた当時の最高権力者(ドージェ)25人もが祭られている。

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